コロナ禍でも「売れる商品」「売れない商品」の差 効果的に需要予測をするにはどうしたらいいか
そんな中で注目されているのが、S&OPです。これはSales and Operations Planning の略で、オペレーションとはSCM(サプライチェーンマネジメント)のことなので、そのまま訳すと「販売計画とSCM」といった意味になります。
これは特にメーカーにおいて重要になってきている概念で、経営戦略を売上の数字に落とし込んだ販売計画の実行をSCMで支援することを指します。
扱うブランド数や商品数が多い大きな組織ほど、それらを横断する意思決定が難しくなります。それぞれを管轄する組織が異なり、企業内でのコンフリクトが発生しやすくなるからです。S&OPでは、意思決定を行うのは役員クラス(CxO)であるため、事業やエリア、ブランドを横断した大きな決定を行うことができるというのが1つの特徴です。
S&OPを推進するための土台は需要予測です。ビジネス環境の不確実性が高まる中、従来のように1つの数字でサプライチェーンを動かしていくのには限界が見えてきています。
「シナリオ分析」とは何か
そこで重要になるのが「シナリオ分析」です。例えば、ウイルスの感染拡大が早期に収まるのか、感染拡大をくり返すのかは、どんな専門機関や大企業でも精度高く予測できているとはいえません。これらを複数のシナリオとして想定し、サプライチェーンマネジメントでリスクヘッジしておくことが有効になります。
感染が収束するのであれば、多くの商材やサービスで需要が回復すると考えられます。その時に商品や設備が用意されていなければ、売上機会を損失することになってしまいます。逆に感染拡大をくり返すのであれば、商品を大量に用意しておくことは、廃棄のリスクを増加させます。これらを数字で評価することで、その中のどのバランスでサプライチェーンを動かすのかを決めることができるのです。
ただしこれには、各シナリオにおける需要を予測できることが必要になります。各シナリオにおける各種要素がどう需要に影響するのかをモデル化し、需要変動の幅を想定します。これはレンジ・フォーキャスティング(Range Forecasting) と呼ばれ、因果モデルの設計、または複数の予測モデルの併用で実現します。
因果モデルでは需要の原因となる要素から予測するので、その要素がどうなるかを入力することで、需要をシミュレーションするといった使い方ができるというメリットがあります。先ほどの例で言えば、新規感染者数などが含まれているとよいでしょう。
また、因果モデルだけでなく、人の判断を用いるデルファイ法やAIなど、他の考え方のモデルも併用することで、需要予測に幅を持たせることも有効です。私も不確実性が高い新商品の発売前の需要予測では、3つの異なる考え方のモデルを駆使して、レンジ・フォーキャストを出しています。ぜひ参考にしてみてください。
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