奄美過疎地に住む仏男性が日本人に伝えたい危機 きれいな海と住民の暮らしをめぐる複雑な事情
「日本のビーチは、世界中のサーファーや旅行者をひきつけてやまない唯一無二の魅力がある。そのすばらしい海岸が今、失われようとしている。これはかつてのイギリスやイタリアで起こったことと同じ現象なんです」
1人のフランス人環境活動家が今、日本の美しい海と生態系を守るため人知れず戦っている。1月中旬、ジョン・マーク・高木(49)さんは、日本外国特派員協会の会見場で、海外プレスに奄美大島の海岸の置かれた現状をこう訴えた。
強く記憶に残る、幼少期に訪れた九州の美しい海
日仏ハーフのジョンさんは、日本人の母のもと、熊本県で暮らした過去がある。その後、フランスやアメリカなど居住地を移してきたが、最後に行き着いたのが自身の原風景だという日本だった。サーファーとして世界中の海を見てきた。そんな中でも、特に幼少期に訪れた九州の美しい海が記憶に強く残っている。
「佐賀の唐津、熊本県天草市の高浜、牛深町に、宮崎県の日南、福岡県の糸島。1980年代当時、日本のすばらしい海の海中でも20m先まで見える透明度は鮮明に覚えている。ありのままの自然の姿に惹かれ、九州中の海に足を運びました」
だが、再び日本を訪れたとき、その記憶は後書きされることになる。
「2000年代に日本に来た時、そんな美しいビーチの数々にコンクリートの人工物ができて、景観が崩れていた。それだけでなく、工場の汚染水や護岸が作られた影響で海は濁り、生物が減り、シュノーケリングなども禁止となっていたんです。
イタリアやフランスではかつて工事が相次いだ影響で生態系が崩れ、海が汚染された。だが、それに歯止めをかけるように再びかつての姿に戻そうと人工物を極力増やさないために法整備もした。
ところが日本では専門家も指摘するように、いまだ十分なインパクトスタディが行われないまま“工事のための工事”が全国的に行われている。護岸ができることで、砂も汚れていく。それでも手つかずの自然に守られた海がわずかながら残っていたんですが……」
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