山陽のレア編成が物語る「アルミ先駆者」の独自性 鋼製車にわざわざ「アルミ車風塗装」をして連結

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現役のアルミ車両には変わり種、かつ貴重な存在といえる車両がある。大阪寄りの先頭車両が「3066」の4両編成(3066号編成)。白地に赤と黒ラインの入った塗装のボディーは一見すると鋼製車体に見えるが、実は姫路寄りの先頭車両(3638号)以外の3両はアルミ車だ。

その後につながる新工法のアルミ車ながら「鋼製車」と同じ塗装の3066号(記者撮影)

単に「塗装されたアルミ車」という珍しさだけでなく、この編成の3066号・3067号は同社のアルミ車両の歴史において重要な車両だ。1981年に造られたこの2両は「新工法のアルミ材(大型薄肉押出形材)を多用して構造を簡略化し、自動溶接で組み立てることでコストを抑制した」(車両担当者)という試作的な車両。この新工法によるコストダウンの実現で、その後の山陽電車の車両はすべてアルミ製になった。

試作要素が強かったことから姫路寄りの先頭車は鋼製車体で造られ、同車に合わせてアルミ製車両も塗装を施すことにしたという。カラーリングは同じでも、鋼製車体とアルミ車体では窓の形が若干違い、アルミ車は縁取りのある「ユニット窓」。車内もよく見ると違いがあり、アルミ車は内装にFRP(強化プラスチック)の成型品を使っているため、ドア周りの壁面などが角のない滑らかな形だ。車端の壁には「アルミ車両」のプレートもある。

1両だけの「ホワイトエンジェル」

その後のアルミ車の基礎となった車両が「アルミ車カラー」でないのと逆に、鋼製車体なのにアルミ車風の塗装をまとっているレア車両もある。1両しか存在せず、「ホワイトエンジェル」と呼ばれているという3619号だ。

鋼製車ながらアルミ車風の塗装を施した「ホワイトエンジェル」こと3619号(記者撮影)

この車両は姫路寄りの先頭車両で、正真正銘のアルミ車である3100号・3101号と3両編成を組んでおり、アルミ製の2両に合わせるためにわざわざ白っぽいグレーに赤ラインの塗装を施している。この塗装の車両はほかになく、「3619号だけに使用するための塗料(N-8 国鉄灰色9号)を準備した」(車両担当者)というこだわりだ。

「ホワイトエンジェル」が誕生したのは1983年。ラッシュ時の神戸方面行き4両編成に東二見駅で増結して6両運転するための車両として、増結に対応する連結器を備えたアルミ製の3100号・3101号を製造したのがきっかけだ。増結は将来的な計画だったため、まずはこの2両に3619号を連結し、3100号+3101号+3619号の3両編成をつくった。

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