全国各地の鉄道で見られる「銀色の電車」。車体にステンレスやアルミ素材を使用した車両だ。日本国内で本格的な導入が始まったのは昭和30年代で、鋼鉄製よりも軽く錆びないといったメリットから現在では完全に鉄道車両の主流となった。無塗装の銀色でなく塗装している例も多い。
JR各社や関東大手私鉄の多くで通勤電車の標準となっていることもあり、どちらかといえば目立つのはステンレス車両。だが、アルミも負けていない。塗装しているため外観ではわからないが、現役の新幹線車両はすべてアルミ製。地下鉄にも採用例が多く、東京メトロも全車がアルミ車だ。
日本初のアルミ合金製電車が登場したのは1962年で、2022年は60周年にあたる。初めて採用したのは地下鉄でも国鉄でもなく、神戸と姫路を結び「山陽電車」の名で親しまれる山陽電気鉄道(兵庫県)だ。
初のアルミ車導入のきっかけは
同社の社史『山陽電気鉄道百年史』によると、「わが国初の軽合金車両となった2000系アルミカー」が完成したのは1962年5月28日。それ以来60年、一時期のブランクを挟みつつ同社はアルミ製車両を導入し続けてきた。
「2000系からその後の3000系、その後の車両もアルミで造ってきたので、社員の中では『ウチはアルミ』というのは浸透していると思います」と、同社鉄道事業本部技術部の車両担当リーダー、井上隆裕さんはいう。
なぜ山陽電車がアルミ製電車のパイオニアになったのか。そのきっかけは車両メーカーが試作を持ちかけたことだった。前出の社史によると、「川崎車両が昭和35年12月にドイツのWMD社と軽合金製鉄道車両の技術提携をしたことで、その試作を当社に打診した」とある。
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