山陽のレア編成が物語る「アルミ先駆者」の独自性 鋼製車にわざわざ「アルミ車風塗装」をして連結

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当時すでに山陽電車はステンレス車両を導入していたが、これは外板だけステンレスを使い、骨組みなどの構造は鋼鉄製車両と同様の「セミ・ステンレス車両」で、軽量化よりも塗装の省略が狙いだった。一方でアルミ製車両は軽量化が期待でき、電力の節約やレールの摩耗が減るといったメリットがあることから、同社は採用を決めた。

高価なアルミ車の導入にあたっては、製造費やメンテナンスコスト、電力費などのメリットを見極めるため、同型車体のセミ・ステンレス車も同時に導入したうえで比較。その結果、電力や消耗品の節約に効果があることが確認され、1964年に登場した後継車種はアルミ製となった。現在も活躍を続ける「3000系」だ。

3000系は1985年まで約20年間にわたって基本的なデザインを変えずに増備が続いた標準車両。初期に造られた2編成のあとは、1968年の神戸高速鉄道開業と阪神・阪急乗り入れに向けて低コストで大量導入するため鋼製車体で造られたが、1981年に新工法でコストを抑えたアルミ製試作車が登場。以降の新造車両はアルミ製に変わり、3000系以降の後継車種はすべてアルミ車だ。

かつては「うろこ模様」が

長い歴史を刻んだ車両は今もその姿を残す。2000系アルミカーは1990年に現役を引退したが、今も3両編成が丸ごと保存されている。初期のアルミ車は溶接の跡や歪みを取った跡が目立ったといい、当初はこれらを見えにくくするために「うろこ状」の模様を施していた。のちにこの加工は消されたが、保存車の外板にはかすかに痕跡が浮かぶ。3000系の初期車も当初は同様の加工を施していたという。「当初はクリアラッカーのようなコーティングもしていたそうです」と井上さん。現在は、アルミ車は基本的に無塗装だ。

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