山陽のレア編成が物語る「アルミ先駆者」の独自性 鋼製車にわざわざ「アルミ車風塗装」をして連結

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同社によると、もともと3619号は1970年の大阪万博開催時の輸送力増強に向けて1969年に造られた車両。当初は3000系鋼製車の3両編成、その後は運転室のある先頭車両ながら中間に連結し、4両編成で運用していたという。アルミ車と編成を組むにあたって、塗装はアルミ風のライトグレーに変更。連結器も取り替えて3101号とつなげられるようにした。

だが、6両運転は増結ではなく6両編成の車両を投入することになり、増結対応だった連結器もほかの車両と同じものに交換。結果的にアルミ車と「アルミ車風塗装」の鋼製車による3両編成が今まで続いている。わざわざ専用の塗料を用意してまで「アルミ風」に統一した外観を崩さない配慮は、山陽電車のアルミ車に対するこだわりを感じさせる。

「他社が見学に来る」

車体が腐食することなくメンテナンスが軽減できるというアルミ車だが、独特の難しさもある。井上さんが注意する点として挙げるのは「異種金属の部品を取り付ける場合」。アルミは種類の異なる金属と接触すると境界から腐食しやすいといい、ステンレスや鉄などの部品を取り付ける際には腐食防止剤を塗るひと手間が必要だという。

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また、車体がへこんだ場合の修復も鋼鉄製車両とは違う。「鉄なら切って継ぎはぎして直せますが、アルミは内側から叩きだすか引っ張り出すか。後から溶接で直すというのが難しい」(井上さん)。大がかりな修復はメーカーに依頼することになるという。

一方で、「アルミの車両はそういうふうに修復できるんや、ということで見学に来られる鉄道もあります」(技術部車両担当・中村利行さん)。アルミ車の運用で長い実績のある山陽電車に注目するのは鉄道会社だけではない。中村さんによると、「50年くらい使っているアルミの材料が珍しいということで、日本アルミニウム協会が経年劣化の観点で見に来られたこともある」といい、解体車両の部品調査の結果、十分な強度が保たれていることがわかったという。

今では全国各地で当たり前となったアルミ製車両。その第一歩となった山陽電車の果たした役割は決して小さくないだろう。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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