首都圏だけで900棟超、タワマン売れる意外な理由 280棟が国内で建設予定、節税目的が大誤算も

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では、このタワマン節税の未来はどうなるのであろう。あたりまえだがタワマン節税の効果を享受するためには、購入者である高齢者が死ななければならない。購入者が亡くなってはじめて、大きな税負担をすることなく相続人に全財産が相続される。

そしてお役御免になったタワマンはマーケットで売却してしまえば、人気のタワマン、大きな含み益まで実現して、すべてがうまくいくというのがこの節税のサクセスストーリーだ。

だが、この対策には死角がある。節税対策ではあっても不動産投資である。投資は最後に出口があってはじめて完結する。

最近は長生きをする高齢者が多い。80代で購入しても10年以上長生きする高齢者は少なくない。その間、人に貸して運用益をとれるかもしれないが、購入した簿価に比べて利回りは低い。マンション価格がどんどん上昇すれば、ただひたすら死ぬのを待っていればよいが、さてどうであろう。

タマワン節税はアパート投資と構造的に変わらない

かたや、アパート投資と同様、近隣には続々とタワマンが建ちあがってくる。なにせこれまで900棟以上あったタワマンがさらにこの先わかっているだけで280棟も出来上がるのだ。当然競合は激しくなる。よほど良い立地にあれば別だが、湾岸エリアのマンションは海からの塩害などの影響で建物の経年劣化が激しいと言われる。

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築年が経過するごとにマンションは古ぼけて、築15年を超えると最初の大規模修繕が発生する。またマンションマーケットが今後も高騰を続ける保証はどこにもないのだ。インバウンド需要というが、世界情勢の変化によってこんな需要が簡単に吹き飛ぶことは、コロナ禍でも実証済みだ。

いざ相続が発生して節税効果が享受できたとしても、その後売却のタイミングを失うと、節税のために買った高額なタワマンについて回るのが、節税効果を高めるために仕組んだ借入金だ。時価が簿価を下回るようになれば、借入金の返済は思うようにいかなくなる。こうなってしまうと借入金元本はつねにまとわりつき、節税効果どころの話ではなくなってしまうのだ。

こうしたタワマンの考えたくない未来が、今後現実のものとなる可能性は意外にありそうだ。アパート投資での失敗を笑っている場合ではなく、実はタワマン節税も構造的にはまったく同じ問題をはらんでいる。所詮は今までが安定した、あるいは「いけいけどんどん」のマーケットであったという事実だけが論拠の節税手法なのだ。

不動産の未来が変わるのは、節税王のタワマンにおいても例外ではないのだ。

牧野 知弘 不動産事業プロデューサー

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まきの ともひろ / Tomohiro Makino

1959年生まれ。東京大学経済学部卒。ボストンコンサルティンググループなどを経て三井不動産に勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て独立。現在はオラガ総研代表取締役としてホテルなどの不動産プロデュース業を展開。また全国渡り鳥生活倶楽部株式会社を設立。代表取締役を兼務。著書に『不動産の未来』『負動産地獄』『空き家問題』『2030年の東京』(河合雅司氏との共著)など。

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