首都圏だけで900棟超、タワマン売れる意外な理由 280棟が国内で建設予定、節税目的が大誤算も

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

新築に引きずられるように中古価格も高騰しており、たしかに2000年代前半から2014年くらいまでにこのエリアのタワマンを買った人は相当の含み益を実現するチャンスが到来していることになっているし、実際に売却して多額の利益を手にした人もいる。

テレビドラマでも演出されているように、タワマンは比較的若いエリートサラリーマンやパワーカップル、富裕層が住むマンションとして描かれることが多いが、購入者の実態はやや異なる。国内外の投資家に加えて多いのが高齢富裕層なのである。

理由は簡単だ。タワマン購入は相続対策として有効だからだ。これまでも何度か触れてきたように、相続の際に所有している不動産は、土地部分については路線価評価、建物については固定資産税評価によって課税評価総額が決まる。現金で持っていれば金額通りの査定になってしまうが、不動産だと時価よりもだいぶ安く評価されるのが、不動産が相続対策として有効であると言われる理由だ。

タワマンが売れる理由は「節税効果」

その中でもタワマンの節税効果が高いのは、タワマンの時価と相続税評価額との乖離が大きい、つまり資産評価額の圧縮効果が高いことによるものだ。東京湾岸部のタワマンを例に考えてみよう。

【事例】東京湾岸部(イメージ)
土地面積:4000坪、建物延床面積:32000坪、住戸戸数:1000戸
戸当たり持ち分:土地4坪、建物32坪(共用部を除く専有部で25坪)
販売価格:1億円(土地8000万円、建物2000万円)
専有部坪単価:400万円
土地路線価:400万円/坪

このマンションの建つ土地の路線価は坪当たり400万円であるのに対し、購入価格に占める土地代は坪当たりで2000万円(8000万円÷4坪)である。つまり相続税評価上は、坪当たり1600万円分を圧縮できることになる。

建物については固定資産税評価額であるので経年とともに評価額は減額される。したがって相続のタイミングにもよるが、相続時評価額が土地建物あわせても3000万円程度(土地1600万円、建物1400万円程度)となる。

1億円を現金で持っていれば、額面通りの評価となるが、全体として7000万円程度評価額の圧縮ができるというわけだ。さらにこれを借入金で買えば、借入金額分を評価額から控除できるので、実質相続税を払わなくて済むというのが理屈だ。

なぜタワマンが節税で効果が高いかといえば、土地の容積率が高く、戸当たりの持ち分が少ないため、路線価評価額との乖離が大きくなりやすいこと、また高層部ほど高い価格設定で売れるので、同じ住戸面積でも高層部ほど土地代の割合が高く設定でき、圧縮効果が高まることによるものだ。

これが、タワマンが売れている、しかも高額帯の部屋ほどよく売れる最大の理由となっているのである。

この対策については、一部の不動産関係者が書籍まで出して大宣伝をしてしまったがゆえに、税務当局の関心をひくところとなり、タワマンの土地建物を一律で相続税評価をせずに建物の階層によって段差をつけるという「節税対策の対策」を施されてしまい、以前ほどの節税効果は封じられてしまったが、効果は薄まったもののいまだに十分な節税効果をもっているのである。

次ページ「長寿」という落とし穴
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事