「ダイエット=鶏胸肉」に固執する人が見落とす事 ボディビルダーの叡智を生かした減量法とは

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MCTオイルといえば、ケトジェニックダイエットの代名詞のような存在ですが、除脂肪食を進める過程においても、その恩恵は大きいと言えます。なぜなら、体脂肪になりにくいばかりか全身の脂質の代謝が上がるというデータが出ているからです。簡単に言えば、食べるだけで脂肪が燃えるということ。言葉としては矛盾がありますが、事実、除脂肪に直結したFなのです。

脂質の主要な構成要素は「脂肪酸」です。脂肪酸にはエネルギーとして使われやすい「飽和脂肪酸」と、血中の中性脂肪やコレステロール値を調節する働きがあると言われている「不飽和脂肪酸」があります。これらは、炭素を結ぶ鎖の長さによってさらに「長鎖」「中鎖」「短鎖」の3つに分けることができます。

オメガ3は不飽和脂肪酸であり長鎖脂肪酸、MCTオイルは飽和脂肪酸であり中鎖脂肪酸。そして参考までに、1枚目のカードで摂取量を増やした食物繊維が腸内で発酵して生まれるのが短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸は水の性質に近いため、調理における油の役割を果たしません。だから、日常的に私たちが摂る油は長鎖か中鎖かのどちらかとなります。

MCTオイルで脂質の代謝が上がる

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2つの違いは代謝経路。通常、口に入った食べものは咀嚼を経て胃に入り、小腸から血管に入って門脈を通り、肝臓で代謝されて全身に送られます。しかし、長鎖脂肪酸はサイズが大きく門脈に入れないため、リンパ管へと送られてそのまま全身の体脂肪に貯蔵されます。

その点、中鎖脂肪酸は門脈に入り肝臓で代謝されます。それが体脂肪になりにくいと言われるゆえんですが、それだけでなく、皮下脂肪も同時に燃えるというデータがあるのです(※)。

※Kasai, et al., 2003)

つまり、MCTオイルを摂ると全身の脂質の代謝が上がるということ。理由は明らかにはなっていませんが、肝臓で代謝されてケトン体が生まれることで脂質代謝が上がるのかもしれません。いずれにせよ、美味しい食感と腹持ちを叶えてギルトフリーに油を楽しむアイテムとして、とてもオススメです。

岡田 隆 日本体育大学准教授、理学療法士

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おかだ たかし / Takashi Okada

1980年、愛知県生まれ。日本体育大学准教授。理学療法士、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、JOC強化スタッフなど役職多数。日本体育大学大学院体育科学研究科修了。2014年東京オープンボディビル選手権大会70kg以下級優勝。トレーニング法や食事法など肉体改造に関する最新情報を世界中から集め、自らの体で試しつつ検証を重ね有効なものをトップアスリートに伝授している。「鋼鉄の肉体を誇る錬筋術師」の異名を持つ。

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