「のび太の宇宙小戦争」原作をリメイクした意味 現代にも刺さる「映画ドラえもん」最新作の魅力

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――パピの姉・ピイナは原作や85年版には出てこない新キャラクターです。既に完成されている物語に後からオリジナルキャラクターを追加するのは、結構な賭けではなかったですか。

佐藤:それも、パピを深掘りするためです。パピは子どもなのに一国の大統領、つまり超優等生。のび太たちがパピに共感するには――劇中のジャイアンの言葉を借りるなら――「完璧超人」すぎるんです。だから「唯一の家族である姉が人質に取られてしまう」という状況を作り、それに弱り果てるパピにのび太たちが我が事として共感できるようにしました。新キャラを出したかったわけじゃなくて、パピを深掘りしたかったんです。

――とあるシーンでパピが感情的に怒るのには驚きました。これも原作にはない描写です。

佐藤:そうすることで、のび太たちも「大統領も完璧超人じゃない。僕らと同じ年頃の男の子なんだ」ってなりますから。ただ、パピのパーソナリティ描写に関しては、決して原作が不完全だったということではありません。原作が描かれた1984年当時の宇宙人像がそういうものだったと思うんです。『E.T.』(1982年公開)の感じをもうちょっと増幅したような。

――たしかに、「地球人よりずっと優れた崇高な知的生命体」というのが当時主流の宇宙人像だったと思います。文字通り異国の人であり、地球人の気持ち的にはやや遠い存在というか。

佐藤:ええ。だけど、今の子どもたちはもっと違う感覚を持っていると思うんです。相手が異星人であっても、つまり違う人種、違う体のサイズ、違う価値観の持ち主であっても、その存在を受け入れる。今の時代ではそれが普通だという感覚。それを共有できる物語にしたかったんです。

原作の解像度を上げる

――キャラクターの深掘りという意味ではスネ夫もですよね。『のび太の宇宙小戦争』は大長編ドラえもんの中でも特にスネ夫の存在感が大きい作品ですが、今回の映画版ではさらに大きくなっています。やたら戦いを怖がり、ぐずっていました。

脚本家。1969年、埼玉県生まれ。専門学校在学中から放送作家として活動をスタートし、1997年に放映された『永久家族』で初めてアニメ脚本を手がける。代表作に『カウボーイビバップ』『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『怪盗ジョーカー』『サイダーのように言葉が湧き上がる』など(撮影:今井康一)

佐藤:原作では1回だけだったぐずりが、2回に増えています(笑)。でもそれって、むしろ今の僕らが共感できてしまう等身大の感覚じゃないですか。他の星のゴタゴタはその星の問題であって、僕らが首を突っ込む必要があるのかな?という。

パピやスネ夫だけでなく、反乱軍のギルモア将軍やドラコルル長官など、さまざまな登場人物を全体的に深掘りしています。原作を大きく変えるということではなく、「原作の解像度を上げる」イメージですね。リメイクにあたって原作から何かを変えたというより、原作が持っているコアの部分を自分たちなりに、現代の受け手に伝わりやすくするために脚色した、というのが正確な言い方だと思います。

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