クロマグロ、「中国は獲り放題」という理不尽 "絶滅危惧種"の資源量回復へ必要なこと

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世界の海は6つの地域管理漁業管理機構に分けられている。日本近海を含む西太平洋は、中西部太平洋まぐろ委員会(WCPFC)の管轄下にある。WCPFCは今年9月、福岡市で第10回北小委員会を開催し、30キログラム未満の未成魚の漁獲量を2002~04年平均水準から半減させ、30キログラム以上の大型魚の漁獲量を増加させないこと、歴史的最低水準付近にある親魚資源量(2.6万トン)を2015年からの10年間で歴史的中間点(4.3万トン)まで増加させることなどを決定した。

その結果、日本は未成魚の漁獲量を8015トンから4007トンまで減少させなければならず、そのうち曳き縄や定置網などを使用した沿岸漁業の2007トンについては全国を6ブロックに分けてブロックごとに漁獲上限を設け、モニタリングと漁獲データのフィードバックを行うなど管理体制を整えている。また大型魚の漁獲量については4882トン以内に制約されている。

中国は漁獲量を報告せず

マグロは3年ほどで成魚になるので、日本などが漁獲を自粛すれば短期のうちに資源量を回復させることが可能なようにみえる。しかし、ことはそう単純ではない。中国のように、WCPFC加盟国であるにもかかわらず、漁獲量の数字を報告していない国があるのだ。よって中国については目標数字が設定できず、規制の対象から免れることになっている。中国は経済水準の上昇とともにマグロの消費量も増加しているため、不公平感は否めない。

さらに入漁料の問題もある。パラオ、ツバル、ニューギニアなど8カ国で構成するナウル協定加盟国(PNA)は今年6月13日、加盟国の排他的経済水域での入漁料を1日6000ドルから2015年に一気に8000ドルに引き上げることで合意した。同水域はカツオ・マグロの豊な漁場がある。当初は1日1万ドルに引き上げる予定だったが、いきなり67%もアップさせるのは無理である。そもそも2013年の入漁料は1日5000ドルだった。

入漁料を引き上げることで、管理が改善され資源が保全されるというのがPNA側の言い分だ。だが本当に資源に配慮するならば、漁獲量に応じて入漁料を支払う制度の方が公平で有効だろう。

単価の引き上げを続けたことにより、PNA8カ国に支払われる入漁料は、2010年の6000万ドルから2013年には2億4000万ドルと4倍にも急増した。その背景には金にあかせて乱獲する中国漁船の存在もあり、それがPNA諸国を潤すことにも繋がっている。

マグロ資源を保護するには漁獲量の規制ばかりではない、公平な漁獲方法のルールを作ってそれを順守するという各国の姿勢もまた必要だろう。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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