ドッキリ番組の赤外線カメラ映像が白黒になる訳 テクノロジーのベースにある物理学の楽しみ方
しかし、陸上で暮らすほとんどの哺乳類は、緑と青の2種類の光しか感受できないといわれています。どうやら、ほとんどの陸上の哺乳類が夜行性であり、夜間生活に色の区別がそれほど重要ではなかったことが原因であるようです。
代わりに、夜目が利く生き物が多いのが哺乳類の特徴です。
一方、爬虫類や鳥類などは、人間に見える三原色以外に紫外線をも見ることができるといわれています。つまり、人間よりも感受できる色の種類が多いのです。
人間の目には十分色彩豊かに見える虹も、カラスやスズメにはさらに色彩豊かに見えているのでしょう。その代わり、夜盲症を鳥目と呼ぶように、鳥の視力は夜になると急激に衰えてしまうようです。
感受できる色に違いがあるのは、それぞれの動物が網膜に持つ「錐体細胞」に違いがあることが原因です。錐体細胞は眼球の網膜の中心部にあり、色や形状などを感知する細胞です。
人間の網膜には3種類の錐体細胞(赤錐体、緑錐体、青錐体)があります。
・赤錐体では赤色周辺(波長が約600〜770nm[ナノメートル])の光
・緑錐体では緑色周辺(波長が約500〜600nm)の光
・青錐体では青色周辺(波長が約380〜500nm)の光
を感受できます。
ちなみに、色と光の波長の関係は表1の通りです。
ここでナノメートルのイメージを、実際の例で説明しておきましょう。
1nmとは1mの10億分の1の長さを表わします。地球一周の長さが約4万km、つまり25周で10億mですから、1nmの小ささがどれほどのものかイメージできるでしょう。
見えない色を見る
前述のように、犬や猫などの多くの哺乳類の網膜には、実は錐体細胞が2種類しかありません。緑錐体と青錐体だけです。
つまり、錐体細胞の種類が人間よりも少なく、先程の表1を参照していうと、人間が感受できている光のうち、約600〜770nmの波長を持つ光が感受できないのです。
ですから、私たちが「赤」と呼ぶ色を犬や猫に見せても、「非常に暗いグレー」に見えてしまうようです。
しかし、爬虫類や鳥類は赤・緑・青の三原色を感受する錐体に加えて、表1でいうところの約300nm前後の波長を持つ光(紫外線)を感受できる第4の錐体を持っていますから、人間以上に多くの種類の光(色彩)を感じることができるのです。
ここで1つ、気づくことがあります。「見える」ということは、必ずしも人間が「色彩」と呼んでいるものを伴うわけではないということです。