ウクライナから脱出する男性「今心配している事」 現地を離れる人、遠くから家族見守る人の思い

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以前から緊張感が高まっていたとはいえ2月24日の侵攻は世界中が驚愕した。ポーランド・ワルシャワ在住のウクライナ人・ダリアさんも「まさか」と思ったという。彼女は2016年に学生としてポーランドに移住し、現在はワルシャワにあるフィンテック系の会社でデザイナーとして働いている20代の女性だ。

ダリアさんは25日から休暇でローマに行く予定にしていたが、もちろんキャンセル。家族はロシアとの国境に近く、甚大な被害を出しているハリコフに住んでいる。

「私はルガンスクで生まれ育ち、キエフのアートスクールに進学しました」というダリアさんの家族は、母親、今年91歳になる祖母、10歳ほど年の離れた姉夫婦と姪。姉は高校卒業後にハリコフに引っ越したが、母親と祖母は2014年に始まったドンバス戦争を機にハリコフに移ったという。ドンバス戦争とはウクライナのドンバス地方と呼ばれる地域で今も続く武力衝突だ。

最初の攻撃があった24日に一家はハリコフから車で2時間ほどの小さな街に疎開したが、国外退避をするつもりはない。「私の祖母は、第2次世界大戦、ドンバス戦争、そして今回の軍事侵攻と3回も戦争を経験しました。第2次世界大戦の時は10日間も歩いて安全なところまで非難したらしいけど、91歳の今は数時間座った姿勢でいるのも難しいので、長距離移動は無理なんです」(ダリアさん)。

12歳の姪と姉だけでも国外に逃れないのかと尋ねたところ、「うちの家族はいつも一緒。離れ離れにはならない」という。田舎町だがインターネットの接続は問題ないので、頻繁に連絡を取り合っている。

「第一言語がロシア語でも私はウクライナ人」

日本では知らない人もいるかもしれないが、ウクライナの公用語はウクライナ語。ただ、東部の人はロシア語が母語という人が多い。ダリアさんも第一言語はロシア語だ。

デザイナーでありフォトグラファーでもあるダリアさんが製作したイラスト(イラスト:ダリアさん提供)

「ウクライナは非常に大きな国なので、それぞれのエリアで異なる文化や歴史を持ちます。『言葉の違い』はそれぞれのエリアが互いにいがみ合っていると演出するためによく使われることです。でも、ロシア語圏とされる地域でもウクライナ語での授業がありますし、ちょっとアクセントが違うくらいで私は問題なくウクライナ語も話せます。差別的な発言をする人もゼロではありませんが、自分自身の体験として『ロシア語圏の出身だからあなたとは話したくない』という人に会ったことはありません」とダリアさん。言葉の問題は政治的なプロパガンダに利用されているにすぎないという。

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