問題は、これが賃金を上昇させるかどうかだ。そうなると、物価と賃金のスパイラル的な上昇が生じる危険がある。
日本の賃金決定メカニズムは、アメリカのそれと大きく異なる。
日本の賃金は企業ごとに決まる
アメリカではジョブマーケットでの需給によって1人ひとりの賃金が決まるのに対して、日本にはそれに対応したマーケットがない。賃金は企業ごとまとめて、労使の交渉で決められる。
アメリカでジョブマーケットがあるのは、従業員の企業間移動が頻繁に行われるからだ。日本にそれがないのは、多くの従業員が1つの企業に固定されていて、移動することがまれだからだ。
日本のジョブマーケットは、ハローワークのレベルと、専門家のヘッドハンティングなどに限られる。
では、日本では、どのようにして賃金が決まるのか?
高度成長期においては、春闘を通じて上げ幅の「相場」が形成され、それによって大企業の賃金が決定され、それが中小企業に波及していくと考えられていた。
しかし、その後、春闘の影響力は低下した。
仮に春闘で賃上げが実現しても、それが経済全体の賃金を引き上げることはない。
これは、安倍内閣時代に政府が春闘に介入して、2014年以降2%の賃上げが実現したにもかかわらず、経済全体では実質賃金伸び率がマイナスになったことをみてもわかる。
連合は、今年の春闘で定期昇給を含めて4%程度の賃上げを求めている。
しかし、これは、日本では過去四半世紀の間に実現したことがない数字だ。
物価が4%程度上がる可能性があるから、それに見合った賃上げを要求するということかもしれない。
しかし、以下に述べる2つの理由によって、このような賃上げは不可能と考えられる。
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