日本で賃金が上がらないと考えられる第1の理由は、労働需給が逼迫しているとは考えられないことだ。
ハローワークでの有効求人倍率を見ると、2020年以来1.1を下回る水準だったのが、2021年11月、12月には1.2を超えた。しかし、コロナ前に1.5を超えていたことを考えると、まだ低い。
職業別にみると、介護や建設関係では有効求人倍率が3を超える高い値になっているが、事務的職業では、0.4程度でしかない。
アメリカのように、企業に雇われている人々が引き抜かれていくような状況ではないと考えられる。
1人当たり付加価値が増えないから、企業に賃上げの余力はない
賃金が上がらないと考えられる第2の理由は、企業の1人当たり付加価値が増加していないことだ。
ここで付加価値とは、売り上げマイナス原価だ。賃金は、付加価値から支払われる。
最近時点での日本企業の状況を見ると、図表1のとおりだ。
(外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
従業員1人当たりの付加価値は、2020年4~6月期に新型コロナの影響で落ち込んだことを除くと、ほとんど変化がない。
2020年4~6月期には、1人当たり付加価値が落ちこんだにもかかわらず、賃金カットをせずに、賃金を一定に保った。
輸入価格が顕著に上昇したのは2021年10月頃からで、その影響はここには現れていない。原材料価格の上昇によって原価がさらに上昇し、付加価値が減少している可能性が高い。
以上で見たような状況のなかで賃金を引き上げれば、労働分配率を合理的な水準以上に引き上げることとなってしまう。
つまり、現在の日本で、企業に賃上げをする余力はないのだ。
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