冷水が湯になる高熱?「平清盛」最期が壮絶すぎた 源頼朝の討伐に執念を燃やしながら病に勝てず

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『平家物語』に描かれる清盛の病は激烈だ。体が火を焚いているように熱くなり、清盛が発する言葉というのは「あた、あた」(暑い、暑い)というのみであったという。冷水をかけても、たちまちそれは湯になってしまったそうだ。

清盛の側に寄る者は、その熱さに耐えられなかったそうだ。夫・清盛が病に苦しむなか、妻・時子はある夢を見たという。猛火に包まれた車を門の中に引き入れたが、その車の前後に立っているのは、馬・牛のような顔をした化け物であった。

「この車はどこから来たのじゃ」と時子が尋ねると「閻魔の庁から、平太政入道殿(清盛)のお迎えに参ったのです」と彼らは答える。

車の前に「無」という文字が書かれた鉄札が立ててあるのを不思議に思った時子が鉄札について尋ねると「金銅十六丈の盧舎那仏を焼き滅ぼした罪により、入道殿は、無間地獄の底に落ちられることが、閻魔の庁にて決定されたのです。が、無間の無の文字が書かれて、間の字がまだ書かれていないだけです」と彼らは再び答える。

そこで、時子は夢から覚めて、見た夢を人々に話したので、聞く人は皆、身の毛がよだつ思いであったという。寺社に金銀や太刀、弓矢を奉納し、清盛の病気平癒を祈ったが、効果はなかった。

有力なのは「マラリア」説

高熱の理由としては、肺炎との説もあるが、マラリア説が有力である。平安時代は気温が高く、マラリアが流行。清盛もその犠牲になってしまったのだろう。

ちなみに、マラリアというのは、マラリア原虫をもった蚊(ハマダラカ属)に刺されることで感染する病気である。今でも、世界中の熱帯・亜熱帯地域で流行しており、2018年11月に公表された統計によると、1年間に約2億人が感染し、43万人が死亡しているというおそろしい病だ。

マラリアにかかったときに出てくる症状は、38度から40度前後の高熱、悪寒、頭痛、下痢や嘔吐などである。古文献には「瘧」(おこり)という言葉がたびたび記載されているが、これはマラリアの一種であると考えられている。

瘧は別名「わらはやみ」(童病)ともいい、『源氏物語』(第5帖「若紫」)にも「わらはやみ」になった光源氏が北山の聖のもとに平癒祈願に行くさまが描かれている。童病と呼ばれたのは、小児が罹患しやすかったことから付けられたようである。

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