マスコミ4媒体はなぜ「ネットに敗北」したのか 電通が発表「2021年広告費の成長」を読み解く

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(グラフ:電通「2021年 日本の広告費」より筆者作成)

2008年のリーマンショックで企業が広告費を減らしてマスメディアが一様に大打撃をくらった後、2009年に新聞広告費がインターネット広告費に抜かれ、少しずつテレビと新聞の関係は薄くなった。新聞広告は気がつくと広告キャンペーンから外され、電話番号を大きく記した健康食品などの通販型だらけになっていった。1軍からいきなり3軍に飛ばされたようなものだ。

新聞に代わってインターネット広告が1軍に躍り出た。テレビをあまり見ない若者層に、テレビCMが届かないのを補うために使われた。効果が本当にあるのか、しつこいターゲティングしてくる、知らない間にやばいウェブサイトにも表示される。そんな文句を言われながらも、数字で結果が見られるのを強みにぐんぐん伸びていった。使い方もさまざまなテクノロジーを駆使し、動画のメニューも増やして幅を広げた。テレビといいコンビとは言えなかったが、テレビの足りないところをうまくカバーしていた。

2019年に金額でインターネットがテレビを抜いてからの2年間、「テレビとネット」は「ネットとテレビ」に徐々にシフトしていった。2021年のマスメディアの敗北は、つまり広告メディアの王様がインターネットになり、「主役はネットでテレビはその補完」になったと言える。インターネット広告費が約2兆7000億円に達したのに対し、テレビ広告費(地上波テレビのみ)は約1兆7000億円。ネットとテレビは1兆円差の新しいコンビになったのだ。

先日登壇した業界向けのウェビナーで、同席したある大手企業の広告担当者が実際にこう言った。「デジタルをまず考えてテレビでどう補完するかを考えます」。私は衝撃を受けたが、もちろんその担当者が特に先見性がある方だからだ。だが遅かれ早かれみんなそうなるということだろう。広告メディアとしてのテレビは、ネットの補完物になったのだ。

なぜ雑誌はデジタル化で成功できたのか

電通発表の日本の広告費では2018年からインターネット広告費の中に「マスコミ4媒体由来のデジタル広告費」という項目を設けた。新聞や雑誌のデジタル版、ラジオのradiko、テレビで言えばTVerのような番組の見逃し配信。こうしたマスメディアが作ったネットメディアの広告売り上げを集計している。

2021年版「マスコミ4媒体由来のデジタル広告費」では、新聞213億円、雑誌580億円、ラジオ14億円、テレビ254億円だ。一番金額が大きいのが雑誌であることに注目してほしい。ちなみに紙媒体としての雑誌広告費は1224億円、つまり紙:デジタル=2:1(1224億円:580億円)になっている。

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