教科書薄すぎ? 公立小のジレンマ 「受験させられない」働く母たちの嘆き
加えて、先生の力量によって落差が大きいことや、校長の異動で方針が変わること、成績評価の不透明さなどが不満ポイントとして挙がった。
ただ、28年間公立小学校で教鞭をとった白梅学園大学子ども学部教授の増田修治さんは、「私立なら大丈夫は幻想」という。私立の小中学校にもいじめや不登校など問題を抱える子どもは少なくない。増田さんにはそういった私立校からの講演依頼が多い。
「私立の特に中等部では、進学実績を上げるためにどんどん授業を進めなくてはいけないから、予備校講師経験のある先生を雇うケースが多い。彼らは教え手としては優秀だと思うが、教育そのものを本格的にやった経験がない。すべての先生がそうではないが、思春期で扱いが難しい年代の心理的な成長にかんがみた教育はなされていないのが実情では」
それなのに、「地元の公立以外の選択肢」に心が揺らぐのは、「公立の教育に不満がある」ということに加え、働く母たちに「自分が働いていることで子どもの教育機会を奪っているのではないか」という後ろめたさがあるからだ。
『母親の貫禄』の著者で受験教育「三石メソード」を主宰する三石由起子さんは、現実を突きつける。
「私立と国立の小学校に通う子は全体の1%で、そこに通わせている母親はほとんど専業主婦でしょう。働いているお母さんでは難しいというのが実情です。自分できちんと教育したければ勤めを辞めるか、勤めが大事なら、お金を払って塾でカバーするか。幼小期の子どもの教育に力を注ぎたければ、二つにひとつというのがセオリーです」
フルタイムでも受験
小学校受験をし、都内で国立の小学校に第3子である娘を通わせている40代の女性会社員は、地元の公立小に通った兄たちの時よりも、家庭の負担が大きいと感じる。
「授業は教科書通りではなさそうだし、子ども同士の話し合いに時間を費やす。基礎学習は完全にご自宅でという感じ。漢字や計算の問題を作ってやらせたりと毎日手間がかかる」