デュポン会長兼最高経営責任者 エレン・クルマン--世界人口の大幅増が商機 食糧やエネルギーに活路
--直近、第2四半期(4~6月期)の売上高が前年同期比26%増の86億ドル、純利益が同92%増の11億ドルになるなど業績回復が顕著です。
今年は前年比で増収増益を見込んでいる。業界や地域ごとにかなりまだら模様だが、農業・食糧関連分野は金融危機の影響を受けず、着実に成長を続けている。自動車関連需要も金融危機時に落ち込んだが、今はその反動で大きく持ち直した。全体で見ると、足元では緩やかながら着実な改善が見られる。2011年も一段の成長が期待できるだろう。
四つのメガトレンドに沿って技術や製品提供
--危機後の事業環境は、化学業界においても大きな地殻変動をもたらすと思われますが、デュポンの経営羅針盤は何を目指しますか。
これは明白だ。「食糧増産への需要」「化石燃料依存からの脱却」「人々・財産・環境の保護」「新興市場の拡大」という、四つのメガトレンドに沿った技術や製品の提供に力を注いでいく。
共通軸は、中国やインド、インドネシアなどの新興国を中心に見込まれる、世界人口の大幅な増大だ。今後、食糧や飼料などが不足する可能性が生じており、同じ土地面積で農作物の生産量を上げていく工夫が求められる。人々が日常生活で使うエネルギーの確保もより必要だ。再生可能エネルギーの太陽電池や、バイオ燃料などの分野がビジネスチャンスになりうる。
また、人間や環境の保護、特に災害や紛争などの際に消防士や兵士を守る、技術や製品も不可欠となるため、プロテクション(安全保護)事業も成長が見込まれる。
--特に力を注ぐ事業について、具体的に教えてください。
バイオ燃料や太陽電池など、脱化石燃料事業に期待している。まずバイオ燃料は、将来的には食糧と取り合うのでなく、セルロースなど廃棄する部分から燃料をつくることが必要となる。また、すでに技術を確立している太陽電池は、発電効率など性能をさらに高めていく。
研究開発には毎年14億ドル(約1140億円)程度を投じており、その75%を食糧やエネルギー、プロテクションなどの各事業に振り向けている。顧客ニーズを取り込み、かつ成長が実現できるような事業分野に焦点を当てていく。