「SIMフリー義務化」でもMVNOを阻む3要因 競争環境の推進は限定的になりそう
SIMロック解除の動きは、MVNOには確かに追い風だ。ユーザーにとっても、MVNOが提供するSIMカードを利用することで、安い料金でiPhoneが利用できるといった仕組みが生まれることは大きなメリットだといえる。
だが、「SIMロックが解除されても、MVNOの広がりを加速させるには、3つの課題がある」と、MVNO最大手の日本通信の三田聖二社長は指摘する。
現状のMVNOの市場シェアは1.1%
三田社長は、「当社は2年前に格安データSIMを投入したが、現時点でもMVNO市場はわずか1.1%。アーリーアダプター層の利用に留まり、マジョリティ層には広がっていない。小さな池のなかで100社以上の企業が競争している状況。社会に対して、なにも影響を及ぼしていない」と前置きし、その背景には、MVNOへの移行を十分に促進できない3つの理由があるからだ」と指摘する。この3つの課題は、来年5月にSIMロック解除が義務化されても、大きな課題を生むことになりそうだ。
3つの課題のひとつめは、電話番号をそのままに移行できるMNP(モバイル・ナンバー・ポータビリティ)において、MVNOでは手続きに時間がかかるという点だ。
現在、MNPで申し込むと、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3つのキャリア間では、その場でSIMを書き換えて、すぐに利用できるようになる。しかし、MVNOにMNPを申し込んだ場合、MVNO側でSIMカードを書き換えて、そのSIMカードがユーザーのもとに到着するまでに2~3日かかるというのが実態だ。その間、ユーザーはスマホを使えないという問題が発生する。このご時世に、2日間も通話ができないという状況が生まれることはあり得ない。それがMVNOへのMNPによる移行に二の足を踏ませている。SIMロックが解除されても、MVNOにMNPで移行する人が限定的になると予測される理由はここにある。
日本通信では、今年2月にはNTTドコモに対して、HLRおよびHSSの相互接続を申し入れている。HLRおよびHSSが相互に接続されることで、MNP契約の際にもリアルタイムでSIMカードを書き換えることが可能になる。当然、NTTドコモとの相互接続が実現すれば、KDDIやソフトバンクモバイルとも同様の申し入れを行うことになるだろう。この環境整備がSIMロック解除による動きを活性化させるには不可欠というわけだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら