ヤフー併呑!ついに牙むく巨人マイクロソフト 広告収入増へ向けた戦い
ネット事業の収益源である広告シェアでグーグル、ヤフーの後塵を拝するマイクロソフト。ヤフー買収で戦いの構図を変えようと大胆な攻めに打って出た。(週刊東洋経済2月16日号より)
「そのように考えている人もいるだろう。しかし、私からはノーコメント」。昨年11月、来日中の米マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOに問いかけた際、それまで冷静に話していたバルマー氏は顔をみるみるうちに紅潮させた。記者の質問は「ネット広告強化のためベンチャー企業へ少額の出資をしているが、グーグルへ対抗するには、いっそのことヤフーを買ったほうがいいのではないか」というもの。「魅力的な会社と思うか」とさらに畳みかけると力強く「ノーコメント!」。
マイクロソフトの焦り 立ち遅れたヤフー
そのマイクロソフトがついに動いた。2月1日、バルマーCEOはヤフーに対し446億ドル、およそ4・8兆円で、全株式を現金もしくはマイクロソフト株との交換で買い取る買収提案を行ったと公表。直前のヤフーの株価に62%ものプレミアムをつけた。マイクロソフトが保有する現預金は12月末で約8000億円。有価証券などの流動資産を足し合わせても2兆円強で、すべて現金で買うとすれば資金調達が必要になる。同社にとってもこれまで経験したことがない大規模なM&Aだ。この決断の背景にあるのは「焦り」だろう。1990年代に基本ソフト「ウィンドウズ」でパソコンの世界を制覇したマイクロソフトは、インターネット事業においても自力で覇権を握ろうとした。ところが、現実は収益源となるネット広告事業を新参者のグーグルが牛耳る状況に拍車がかかっている。2月7日には、今回の巨額買収を成功に導くために世界を横断する格好での法務チームを立ち上げるなど、かつてない本気度である。
同社は「MSN」の名称でポータル事業を進め、長らく打倒グーグル、打倒ヤフーを目指してきた。とはいえ、ネット広告収入で両社の後塵を拝する状況が続いた。そこで、2006年には「ウィンドウズ・ライブ」戦略を開始。ウィンドウズとの連携を生かしながら、グーグルユーザーの奪取を図った。だが、その後もグーグルの勢いを止められなかった。
さらに厄介なのは、グーグルが検索における圧倒的シェアを背景に、ネット経由でワープロソフトのようなパソコン用アプリケーションを無料で提供するサービスを積極化してきたこと。また昨年11月、グーグルは携帯電話用OSにも乗り出すことを発表。マイクロソフトが従来から得意とするテリトリーにも進出してくるようになった。
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