漢方は“何か困ることはありませんか”が口火--『西洋医がすすめる漢方』を書いた新見正則氏(帝京大学医学部准教授)に聞く
──熊胆(ゆうたん)のように有効な化学成分がわかっているものもあります。
まだそうしたものは少なく、化学分析はそれほど進んでいない。そういう意味でも、漢方はなお過渡期にある。
──それでは有効性も低くなりませんか。
漢方は臨床試験をして、有効性が判断されて、保険適用になったわけではない。歴史が評価された。漢方は病名がわからない訴えに処方される。ただ、エビデンスとしてはなくとも、いくつも処方することでトータルで効けばいい。
たとえば、ある一つのクスリ、葛根湯(かっこんとう)が風邪に効くといわれても、葛根湯が効く風邪はほんの一部。急性期で発熱し、かつ汗が出ていないときしか効かない。葛根湯が効かなかったときにどうするか。別の特徴ある風邪に効くものを試してみる。
──滋養強壮に向いたものも多くあるとか。
補中益気湯(はちゅうえっきとう)の服用を勧めている。滋養強壮ドリンク剤の高級漢方版。かつ安い。仕事で疲れる、徹夜や試験勉強を元気よくこなしたい。こういうときに飲む。
大柴胡湯(だいさいことう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)もいい。万能薬なので、体格のがっちりした人の多くの病気を治せる可能性がある。働く人は常備していていい。