『エクスペンダブルズ』--中高年が日本経済を救う《宿輪純一のシネマ経済学》

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 日本は「少子高齢化」ということで、経済力が落ちてきているという。日本の経済成長を抑えているのは、中高年に対する高度成長期の硬直的な社会制度、という可能性もある。早めの出向、そして定年制度もそうである。一方で、近未来には日本は労働力不足になるとのことである。

最近の人口に関する経済的議論で問題だと思うのは、いつも“数”の議論で“質”の議論にはならないことだ。突き詰めれば、能力があって成果を上げられる人が仕事を辞めるのは、日本の経済的損失になるということである。しかも、最近、以前と比べて元気な中高年もたいへん多い。

この映画を見てもわかるのは、中高年も気の持ちようによって、十分元気で働ける。ダメな若者よりもよっぽど使えることもある。会社も十分に成果を上げていれば、働いていただいたほうがよいのではないか。

定年を迎えた元気な中高年は旅をして、消費するだけだったら寂しい。少なくとも筆者は働き続けたい。また、年をとっても働くということは健康にもよいと聞く。

デキる中高年がガンガン働き続けることは、もしかしたら日本経済を救うかもしれない。日本は人口という数は減っても、質の面で維持できると信じたい。

また、やる気のある中高年に再教育の機会を与えることも大事だ。米国のレーガノミクスや英国のサッチャリズムといった経済を活性化させた構造改革政策と、日本の構造改革政策の大きな違いは、前の2つは中高年などへの再教育に注力したことだ。その再教育の部分は、日本の構造改革政策では見受けられないような気がする。つまり頑張ろうとしても、そのような実践的な場がないのである。

3Dのファンタジー全盛の現在であるが、この反骨精神が当たり、北米では8月の公開週に首位に立つなど、ヒット! 早くも続編を検討中とか。

それにしても、出演したアクションスターは、いまこうしている間も体を鍛えているのだろうか。筆者も頑張らなければ!
 
写真:(C) 2010 ALTA VISTA PRODUCTIONS, INC

しゅくわ・じゅんいち
映画評論家・エコノミスト・早稲田大学非常勤講師。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングスなどに勤務。非常勤講師として、東京大学大学院、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学等で教鞭を執る。ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。財務省・経産省・外務省等研究会委員。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『アジア金融システムの経済学』(日本経済新聞社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA

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