ブリヂストン、ベトナムに向ける熱い眼差し 増強でタイ、日本に次ぐ最大級の生産拠点へ

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今年4月に稼働したブリヂストンのベトナム工場。今後、400億円強の設備投資を行い、段階的な増強で17年下期には日産4.9万本(現在6000本)まで増やす予定(写真提供:ブリヂストン)
世界21カ国に50のタイヤ工場を擁するブリヂストン。今年4月はベトナムで、新たな工場が稼働した。同社では現地生産品の現地販売、いわゆる地産地消が原則だが、ベトナム工場は乗用車用タイヤの世界輸出拠点に位置づけられる。
これまでの投資額は約360億円で、生産能力は日産6000本。今後も約400億円強の設 備投資を行い、段階的に能力を引き上げ、2017年下期には日産4万9000本への生産能力増強を予定している。投資が完了すれば、輸出生産拠点であるタ イのノンケー工場(日産4万3000本、14年中に同5万本へ拡大)、滋賀県の彦根工場(日産5万2000本)と並び、ブリヂストンとしては最大級の生産拠点となる。
近隣のタイにも大規模な工場を構える中、なぜ新たに拠点を造るのか。今回、中国・アジア・大洋州を統括する地域本社、ブリヂストン アジアパシフィック(BSCAP)の武田邦俊COO(最高執行責任者)、工場を運営するベトナム子会社、ブリヂストン タイヤ マニュファクチャリング ベトナム(BTMV)の國武輝男社長にその狙いを聞いた。

 

――新工場建設地にベトナム、ハイフォン市を選んだ理由は。

武田COO ベトナム工場が立地する場所はハイフォン港に近く、数年後には港の拡張で、5万トン、10万トン規模の超大型コンテナ船で荷物を運び出せるようになり、コストが大きく下がる。物流コストは毎日のことなので、メリットは非常に大きい。(工場が属する)ディンブー工業団地がベトナム政府から50年の土地のリースを受けていること、来年には首都ハノイからの高速道路が開通することなど、政府からのサポートが大きいのも理由の1つだ。

ベトナム工場の強みを語るBSCAPの武田邦俊COO(写真右)とBTMVの國武輝男社長

――津谷正明CEO(最高経営責任者)が「世界に誇れる工場を目指す」と述べているが、具体的にどのような特色があるのか。

國武社長 特に革新製法と呼ばれる類ではなく、従来型の設備だ。この工場は初期投資を抑えて、生産の立ち上げのカーブをいかに早くするかをターゲットに置いている。各設備の機能を単一化(シンプル)にして、その分、技能員の習熟度を上げている。他の工場より従業員の数は多いが、安価な労務費によってコスト競争力を維持できている。

急ピッチで増産を進行

ベトナム工場で生産するタイヤのサイズに合わせて作った専用の成型機の導入など、個々のプロセスの効率化にも努めたことも特色だ。従来生産していた乗用車用タイヤの2倍のスピードで毎月増産していく目標を今のところは達成している。

――ベトナム国内へのタイヤ供給は考えているのか。

武田COOもともと、生産ラインをシンプルにして大量生産し、コストの安い汎用価格帯のタイヤに対応する輸出拠点として工場をスタートした。だが、いったん工場を作ると、「いつからベトナム向けに供給するのか」と国内の(業者からの)期待も大きい。二輪車から四輪車にというモータリゼーションの目安として、1人あたりGDP(国内総生産)3000ドルが1つのハードル。5000ドルを超えると一気に自動車社会になるというのが、ほかの国の例からも分かる。

人口から見てもベトナムがその局面に入ると、ものすごい勢いで市場が成長していくとみている。せっかくこれだけ本格的な工場を作ったので、将来的に十分活用していけるだろうと考えている。

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