フィットの不具合連発を招いたホンダの内情 独特な組織体制に潜んでいた弱点
何と、またもホンダが主力コンパクトカー「フィット」を含むいくつかのモデルについてリコール(回収・無償修理)を届け出た。特にフィットハイブリッドは2013年9月のフルモデルチェンジから実に5回目、小型SUV(スポーツ多目的車)「ヴェゼル」ハイブリッドについても、2013年12月のデビューから3回目。デビューから短い期間でリコールを連発させるという異常事態である。
リコール対象車のユーザーにしてみれば、点検や整備のために車両を販売会社(ディーラー)に持ち込むなどの余計な手間となるのはもちろん、世間一般的に見てもホンダそのものの信頼を揺るがす事態となっている。そう、ホンダはいったいどうしてしまったのか。
品質問題につながる2つの理由
一連の品質問題には、ざっと2つの大きな理由を挙げることができそうだ。
一つめは、今回のフィット/ヴェゼルハイブリッドに採用された新しいハイブリッドシステム(HV)の機構の複雑さである。エンジンとモーターを併用するのがHVの基本メカニズムとなるが、ホンダは新しい機構を開発・採用した。
「スポーツハイブリッドi-DCD」と名付けられたそれは、従来の「IMA」と呼ばれるHVシステムに比べて、モーターの出力を3倍近くまで高めるとともにDCT(デュアルクラッチギアボックス)の採用によりエンジンと電気モーターの切り離しを可能とし、IMAでは出来なかった電気モーターだけでの走行(EV走行)を実現した。新型フィットハイブリッドはガソリン1リットル当たりの燃費が36.4キロメートル(km/L)と発売時点で世界最高を達成(その後、トヨタ「アクア」が逆転)した。
ホンダの従来型HVはエンジンとモーターが直結している構造で、発進も加速も高速巡航も、常に両方が連動して駆動する状態になっていた。対して、最大のライバルであるトヨタ自動車が主力HVの「プリウス」や「アクア」に搭載する「THS-2」と呼ばれるHVシステムは、2つのモーターと遊星ギアを使った複雑な制御により、たとえばエンジンを停止しながらもモーターの力で発進できるなどの機能が、燃費性能の良さにつながっていた。ホンダはスポーツハイブリッドi-DCDにより、トヨタへの対抗策を得た。
ここで重要なのがDCTだ。フォルクスワーゲン(VW)をはじめとする欧州各車が採用しているこの高効率ギアボックスだが、モード燃費の稼ぎやすいCVT(無段変速機)に固執している日本車メーカーで採用例は多くない。ホンダも例外ではなく、そのため実は現行フィット/ヴェゼルハイブリッドのDCTは、独シェフラー社の技術を採用している。
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