ロシアは憲法に定められた国是に従ってこの問題に介入し、分離派勢力を軍事的に支援したが、ドイツやフランスの仲介で、停戦合意に至った。これがミンスク合意である。
ミンスク合意はドンバス地域の自治を拡大するという内容を含むものだった。ロシアとしては、ドンバスの自治が確立されればドンバスのロシア系住民の権利が守られると考えたのである。一方、ウクライナはドンバスに強い自治を与えることは、ウクライナの統合にとって望ましくないと考えるようになり、ミンスク合意の内容は7年以上にわたって履行されなかったわけだ。
軍事力を増したウクライナに脅威
このような中、アメリカがウクライナへの数十億ドルに上る軍事支援を行ってきたことで、同国は欧州地域でロシアの次に軍事力が大きい国に成長してしまった。プーチン大統領は、この事実を強く非難する。なぜだろうか。
ウクライナは、ドンバス地域の紛争が「凍結された紛争」となり、分断が固定化されることを望まなかった。自治を与えれば分断が固定化されてしまう。何としてもドンバスとクリミアを取り返さなければならない。そのためには軍事的に制圧する選択肢も捨てていなかった。ウクライナがミンスク停戦合意の履行を渋っていた理由である。
ウクライナがアメリカの軍事援助で強化されればされるほど、ドンバスにおけるウクライナ政府軍と分離派勢力の軍事バランスは崩れてしまう。というよりも、すでに崩れていたのである。
それゆえに、昨年末、ロシアはウクライナ東部国境に10万規模の軍部隊を集結させて圧力を加えた。ウクライナ政府軍を牽制し、東部の軍事バランスを回復するためだ。これが、ロシアがアメリカによるウクライナの軍事力強化を非難する本当の理由である。
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