そのうえでロシアはNATO東方拡大阻止と、ロシア周辺のミサイル基地などの攻撃兵器の撤廃といった要求をアメリカ及びNATOに突きつけた。NATO側は、「オープンドア・ポリシー」(NATOに加盟したい国は受け入れる)という旗を降ろすことはできないとはっきりと拒否した。それはNATO側からすれば当然の話で、集団防衛のための組織であるというNATOの根本的な理念にも合致している。
しかし、ロシアが求めていたのは「オープンド・ポリシー」を捨てろということではなく、「ウクライナとジョージア(グルジア)を加盟させるな」ということだったのである。プーチン大統領は、ウクライナがNATOに加盟すれば、ロシア対NATOの戦争になる、と何度も警鐘を鳴らしてきた。どういうことだろうか。
NATOの東方拡大の放棄を迫ったが…
ウクライナはクリミアとドンバスの失地回復を公約に掲げている。仮に、ウクライナがNATOに加盟すれば、NATOはウクライナを防衛する義務を負うことになる。その状態でウクライナが失地回復を求めて攻撃的な行動、例えばドンバスへの攻勢に出れば、ロシアが反撃してきた場合、NATOがウクライナ側に立ってロシアを撃退してくれるはずだ。これがウクライナの思惑だ、とロシアは考えたのである。
ゆえに、ウクライナがNATOに加盟すれば、ウクライナは必ず軍事的な攻勢に出て、クリミアとドンバスを取り返そうとしてくるだろう。それだけは何としても阻止しなければならない。NATOとの戦争になるからである。
しかも、NATOとアメリカはウクライナを軍事的に強化している。時間はロシアに味方してくれない。待てば待つほど、ドンバスやロシアの状況は悪くなっていくのである。ちなみに、ウクライナのゼレンスキー大統領は核武装の可能性にまで言及しており、これがまたプーチン大統領の不安をたきつけてしまった面もある。
ロシアが何度もNATO東方拡大の放棄をアメリカやNATOに迫ったが、ゼロ回答だった。ロシアは、アメリカやNATOが時間稼ぎをしていると考えたであろうことは想像に難くない。ミンスク合意を一向に履行しようとしないウクライナも時間稼ぎという点では同じである。一刻も猶予はならない。物欲しげな顔をして口を開けて待っていても、煮え湯を飲まされるだけだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら