ただ、11月に中間選挙を控えるアメリカ、NATOの東方拡大を何としてでも阻止したいロシア、そして天然ガスの供給のかなりの部分をロシアに依存しているドイツを中心とする欧州と、ウクライナを巡る各国の思惑は入り組んでおり、和平交渉も簡単にはまとまらない。
軍事衝突はどこまで深刻化するのか。こうした混沌は金に対する安全資産としての需要を一段と高めることになる。もし3月半ばになっても問題が解決の方向に進んでいないのであれば、金価格が1トロイオンス=2000ドル台を試す展開となっていることも、十分にありうる。
しかしながら、こうした地政学リスクは、長期に渡って相場の大きな材料となりえないのも事実だ。今のような状況は、コストがかかりすぎるからだ。いずれは双方が落としどころを見出し、問題は解決されると思われる。前述したように、いずれは「終わりの始まり」となって材料出尽くしとなり、先行きの不透明感も払拭されていくことになる可能性がある。
市場の注目がアメリカの利上げに戻れば、急落も
もしそうなれば、金相場は再び大きく値を崩す可能性もある。足元で安全資産としての需要が大きな押し上げ要因となっているだけに、それがなくなった場合の反動もまた大きくなる恐れが高いからだ。
さらに、ウクライナ問題が市場の材料ではなくなった場合、市場の注目は再びインフレに向けられ、FRBが大幅利上げに踏み切る可能性へと戻ってくるようになることも忘れてはならない。
市場は現時点で3月に開かれるFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げが行われる可能性をほぼ100%織り込んでいる。また5月、6月のFOMCもあわせ計3回の利上げが行われる可能性は約90%、さらに年4回の利上げが行われる可能性も40%近く織り込んでいる。
もし6月までに4回の利上げを行うとなると、今後3回の会合のうちのいずれかで、0.5%の大幅利上げを行うか、緊急会合を開いて利上げを決定する必要がある。こうした見通しを背景にアメリカの金利はさらに上昇基調を強め、さらにドルへの買い意欲も一段と強まってくるだろう。これらはすべて、金にとっては大きな売り要因となる。
もちろん金利の上昇を嫌気して株価が大きく値を崩すことがあれば、安全資産としての需要がかろうじて残り、相場の下支えとなることも考えられる。だが、ウクライナ問題が解決に向かうとの見方が優先される格好となり、株式市場に投機的な買い戻しが集まれば、金に買いを入れる理由はほとんどなくなってしまう。
そうなれば1トロイオンス=1700ドルあたりまで一気に値を崩してしまうことがあっても不思議ではない。いずれにせよ、金相場はここから数カ月の間、かなり大きな値幅で乱高下する、不安定な相場展開が続くのは間違いない。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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