中国の金属取引市場で、レアアースの価格が10年ぶりの高値圏に突入した。非鉄金属の情報サービス会社、上海有色網のデータによれば、軽希土類の品種の1つである酸化プラセオジム・ネオジムの2月15日の取引価格は1トン当たり110万元(約1997万円)と、2012年以来の高値をつけた。
酸化プラセオジム・ネオジムの市場価格は、1年前との比較では2.3倍以上に跳ね上がっている。なお、過去の最高記録は2011年6月につけた1トン当たり127万5000元(約2314万円)である。
レアアースの業界団体である中国稀土行業協会が発表している(総合的な)価格指数も、市場価格の大幅な上昇を示している。2月15日の指数は426.8ポイントと過去最高値をつけ、1年前の2倍近い水準にある。
上海有色網のアナリストの楊文華氏によれば、今回の価格高騰の主因は「供給不足」だ。新型コロナウイルス流行の影響で(レアアース資源が豊富な)ミャンマーから原料の輸入が減少した一方、需要家の引き合いは好調で、レアアースの分離・精錬を手がける中国企業の生産が追いつかなくなったという。
投資銀行大手の中国国際金融が2月15日に発表した調査レポートによれば、中国で分離・精錬されるレアアースの原料のうち、ミャンマー産は約10%を占めていた。新型コロナの防疫対策に伴う(中国とミャンマーの)国境封鎖は2021年末から緩和されたものの、安定した量の輸入が回復するにはまだ時間がかかりそうだ。
需要家の行動パターンも火に油
それだけではない。前出の楊氏は、需要家の行動パターンも価格高騰の火に油を注いだと解説する。レアアース相場が上昇するなか、需要家の多くは春節(中国の旧正月。2022年の元日は2月1日)の直前まで様子見を決め込み、自社の在庫を積み増していなかった。ところが、春節明けから一斉にレアアースの確保に走り出し、市場価格がたちまち噴き上がった。
一方、証券大手の中泰証券のレポートは、より俯瞰的な分析をしている。2020年以降にレアアースの相場上昇が加速した背景には、EV(電気自動車)の販売急増に伴うレアアース需要の増加、中国政府が推進するレアアース業界の再編・統合の進展、レアアース生産企業の在庫調整の終了など、複合的な要素があると指摘した。
(訳注:EVを駆動するモーターには、レアアースのネオジムやジスプロシウムを使った強力な磁石が組み込まれている)。
今後の相場の行方について、中国国際金融のレポートは「2022年の市場はこのまま供給不足が続くか、改善しても需給が均衡する程度までで、相場は高止まりが続く」と予想する。一方、アナリストの楊氏は「需要家の在庫積み増しが一巡すれば、価格上昇のペースが緩やかになるかもしれない」との見方を示した。
(財新記者:廬羽桐)
※原文の配信は2月15日
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