中国の製造業では、足元の景気の方向性がつかみづらくなっている。電力不足や原材料価格の上昇などが経営者の先行き不安を招いている一方で、個人消費などの需要は回復傾向を示しているからだ。
11月1日に発表された2021年10月の財新中国製造業購買担当者指数(製造業PMI)は50.6と、前月(50.0)より0.6ポイント上昇。2カ月連続の改善によって好不況の判断の目安とされる50を上回った。
ところが、前日に発表された中国国家統計局の調査に基づく製造業PMIは49.2と、前月(49.6)より0.4ポイント低下し、2カ月連続で50を割り込んだ。2つのPMIは一方が景気拡大、もう一方が後退を示しており、調査対象企業の違いなどによって景況感の濃淡が大きい可能性を示唆している。
製造業の10月の事業活動には、需要側と比較して供給側の弱さが端的に表れている。(供給側の指標である)生産指数は前月より低下して3カ月連続の縮小基調となった。調査対象企業からは「10月初旬以降、電力の供給制限や原材料価格の上昇などによって生産活動が制約されている」との声が多く寄せられた。
コストアップの価格転嫁が増加
生産活動の制約は、雇用にとってはマイナスだ。製造業の10月の雇用指数は(拡大基調と縮小基調の)ボーダーラインを下回り、3カ月連続の縮小基調となった。ただし減少幅はわずかであり、前月比では改善した。
製造業の経営者にとって目下最大の懸念材料は、インフレ圧力のさらなる高まりだ。製造業の10月の購買価格指数は大きく上昇し、2017年以来の高水準を記録した。エネルギー、原材料、物流費などの値上がりが、製造業の経営コストを複合的に押し上げていることを示している。
それに伴い、サプライチェーンの下流側でもコストアップを販売価格に転嫁する企業が増えている。製造業の10月の工場出荷価格指数は5カ月ぶりの高さに上昇した。
そのほか、10月は製造業の購買量指数と原材料在庫指数が大きく低下し、前者が2020年3月以来、後者が同年4月以来の最低値を記録した。需要の回復、生産の制約、電力不足、原材料の値上がりと供給不足、物流の混乱など複数の要因が重なったことで、製造業の多くが仕入れを減らさざるをえない実態を示している。
(財新記者:程思煒)
※原文の配信は11月1日
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