タイプ音や咀嚼音で不調「ミソフォニア」という病 耳栓は自分を「音」から守るための重要なツール

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――ミソフォニアの当事者とそうでない方が共存するために、どんなことが必要だと思いますか?

高岡:僕は当事者以外の皆さんに対して、音を出さないでほしいとは思っていません。場面と状況に応じて、耳栓やイヤホンをつけるなどして、自分で苦手な音を回避してきました。学校も会社も家庭も友人関係もふくめて、その行動を周りの方が理解し、許可してくれるとうれしいです。

田中:私も同じで、「この人はミソフォニアだから、音を出さないようにしよう」と、相手に気を遣わせてしまうのがすごく嫌でした。だから、自分で音をシャットダウンしていたのですが、それを受け入れてもらえる寛容な社会になればと思います。

「聞こえすぎてしまう」から耳栓をしている

遠藤:ミソフォニアは目に見えるケガと違って、見えない症状です。完全に共感してもらうことは難しいけれど、歩み寄ることはできると思う。耳の聞こえづらい人が補聴器をつけるように、「この人たちは、聞こえすぎてしまうから耳栓をしているだけなんだ」と理解してほしい。

相談をしにいっても「気にしすぎだよ」と片付けられてしまうと、ますます誰にも言えなくなる。特にお医者さんなど、助けを求められる立場の方はなおさらです。当事者は、人に理解されづらいだろうとわかっていて、勇気を出して公表しているので、柔軟かつ寛容に受け入れてほしいです。

今回、話を聞いたのは学生たちだが、ほかの職業・立場でもミソフォニアに苦しむ人はもちろんいる。ミソフォニアはまだ認知度が低く、理解もされづらい症状だ。当事者たちの多くもその状況を把握したうえで、苦しみや葛藤を抱えながらも、周囲の人々と共存するために工夫や自己防衛をし、必死に生きている。

決して他人事でないことや、当事者たちの苦しみや思いを少しでも理解し、受け入れて配慮できる社会づくりに、1人でも多くの人が参画することの大事さを、取材を通じて改めて痛感した。

【筆者プロフィール】 
肥沼和之:1980年東京都生まれ。ジャーナリスト。人物ルポや社会問題のほか、歌舞伎町や夜の酒場を舞台にしたルポルタージュなどを手がける。東京・新宿ゴールデン街のプチ文壇バー「月に吠える」のマスターという顔ももつ。

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