タイプ音や咀嚼音で不調「ミソフォニア」という病 耳栓は自分を「音」から守るための重要なツール

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田中:私は何かするときの選択肢が限られています。高校生のときは、カフェや図書館など、音が響く場所を避けていたので、行動範囲が狭まっていました。大学生になってミソフォニアを克服した後も、アルバイト選びのときに『また発症したら……』と考えて、(そしゃく音や食器・調理器具が触れる音などが発生する)飲食店は最初から止めようと。

――ミソフォニアは医学的にも明らかでない部分が多くあり、治療法も確立されていないそうですが、皆さんは病院に行きましたか? その場合、どのような診断をされたのかも教えてください。

遠藤:自分で調べた限りでは薬も治療法もなかったので、私は病院には行きませんでした。ただ、別の症状が出て精神科に行ったときに、ミソフォニアの症状があることを伝えたら、聴覚過敏と診断されて。神経を落ち着かせる薬をもらったのですが、特に変わりませんでした。

田中:ミソフォニアは脳神経にも関連していると学術論文にあったので、脳神経外科に行きました。ただ症状を伝えたら、「気にしすぎだよ」と言われて、すごく傷つきました。その先生はミソフォニアを知らなかったと思うのですが……そもそも、何科を受診していいのかもわかりませんでした。

音を出す人はまったく悪くなく、敵ではない

高岡:僕は大学受験のとき、(音が気にならないよう)個別に試験を受けさせてもらうための診断書の提出が必要だったのでメンタルクリニックに行きました。そのときにミソフォニアと診断され、学校も理解や配慮をしてくれました。ただクリニックからは、ミソフォニアに効く薬は現状ではなく、治療にもお金がかかると言われたので、通院は断念しました。

――高岡さんと田中さんは、現在はミソフォニアの症状がないとのことですが、どのような方法で克服したのですか?

田中:YouTubeでそしゃく音を聞いて、慣れさせていきました。すると耐性がついて、ほかの苦手な音も気にならなくなりました。

高岡:僕も同じ方法で、数カ月で克服できました。ただ、人によっては症状が重くなる場合もあると思うので、必ずしも推奨することはできないです。

――「日本ミソフォニア協会」を立ち上げた思いと活動内容を教えてください。

高岡:ミソフォニアで苦しんでいる人が一定数いるのに、認知度も低いし、周囲にも理解されづらいのが現状です。当事者は悩みを1人で抱えがちになっているので、相談できる場所として、またミソフォニアの理解を広めるために、2020年6月から活動を始めました。

活動内容としては、当事者同士の交流会や、寄せられる相談メールへの返事などをしています。実際、「相談できる人が周りにいないので、聞いてもらえてよかった」と言っていただけることが多くありますね。

遠藤:ミソフォニアの症状もそうですし、当事者の思いも広めていきたいです。例えば、苦手な音を聞いたときに、敵対心や嫌悪感を覚えてしまうのですが、あくまで音に対して。音を出した人は嫌いではありません。音を回避するため、距離を取ってしまうこともあるのですが、その人はまったく悪くないし、私たちも敵だと思っていない、と理解してほしいです。

次ページ周りの理解、認めてくれるとうれしい
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