マツダによると、ある条件での車体の沈み込みは1.7%だったり、3㎜だったりするという。どちらにしろ、わずかな値だ。ロードスターはもともと着座位置が低い。にもかかわらず、KPCによってさらに着座位置が下がったかのような安定感が生まれる。
言い換えれば、サスペンションを構成するダンパーの伸び側が抑制されて、カーブを走行しているのに車体全体が地面に張り付いた……、タイヤの摩擦円のうち曲がる力だけ一回り大きくなった……、そんなイメージだ。
かといって、車体のヨー運動(≒車体の回転運動)はKPCアリ/ナシで変化しない。システムのブレーキ制御によってググッと内巻きの力を発生させるトルクベクタリング機能に対して、KPCは内側後輪の緩いブレーキによってサスペンションのジオメトリー変化を逆利用し、車体を沈み込ませる。
2輪車の後輪ブレーキに考え方が近い
何度同じカーブを走らせても自然な車体の動きとして感じられたのは、ヨー運動を変化させることなく車体を引き下げ安定させる、こうした運動学に則った考え方のうえにKPCがあるからだ。
ところでオートバイ(2輪車)も、走行中に後輪ブレーキを掛けると車体全体が沈み込む。カーブではこの沈み込みを活用して積極的に後輪ブレーキだけを使う乗り方がある。安定性を高められるからだ。
カーブの曲率と速度に合わせて失速しない程度の緩い後輪ブレーキを掛けることで、車体をわずかに沈み込ませる。すると、ライダーと2輪車の一体感が高まりカーブのライントレース力が大きく増え、フラフラせずに安定して走らせることができる。
KPCは2輪車の後輪ブレーキに考え方が近い。そもそも車輪の数からして違うが、ロードスターは2輪車と同じく、後輪にブレーキを掛けると車体が沈み込むアンチリフト特性(ジャッキダウン力)を強く発生するように設計されているからだ。
昨今、後輪を駆動するFR方式のクルマ(FR車)には、どれも後輪ブレーキによるアンチリフト特性を持たせているが、ロードスターはコンパクトサイズ、軽量ボディのFRスポーツカーであることから、車体の安定化を目的に沈み込みやすくなるよう設計されている。
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