任天堂の蹉跌--ゲーム機関連の販売減と円高で今期業績を大幅下方修正。ただ、これ以上の後退は考えにくい

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任天堂の蹉跌--ゲーム機関連の販売減と円高で今期業績を大幅下方修正。ただ、これ以上の後退は考えにくい

ゲーム業界の“王者”がつまづいた。任天堂は今2011年3月期業績が、売上高1兆1000億円(前期比23%減)、営業利益2100億円(同41%減)、当期純利益900億円(同60%減)になると発表した。従来予想よりも売上高が3000億円、営業利益が1100億円、当期純利益が1100億円も下振れる。4~9月期(上期)は、最終損益で20億円の赤字に転落する見通しだ。

ゲーム機ハード、ソフトともに、当初の見通しよりも売上高が減少。また、円高の影響が大きく響く。売上高と営業利益が押し下げられるだけでなく、営業外でも外貨建てで保有する現預金や売掛金の為替差損が膨らむ。「東洋経済オンライン」も暫定的に、会社計画を踏襲する。

今期は家庭用ゲーム市場の縮小を受け、任天堂の製品も苦戦を強いられている。携帯型ゲーム機「DS」の販売見通しが、従来計画の3000万台から2350万台に、関連ソフトが同1億5000万本から1億2500万本に後退。据え置き型ゲーム機「Wii」の販売も、従来計画の1800万台から1750万台に、関連ソフトも従来計画の1億6500万本から1億3500万本に後退する。

今期は裸眼で3D画像を体感できる新作ハードの「3DS」が大きく稼ぐと見られていたが、発売が来年2月と、最大の稼ぎ時期であるクリスマス商戦を逃すことになったことも痛い。来2月以降は挽回が期待できるものの、今期業績への貢献期間が短いこともあり、既存製品の落ち込みをカバーすることは難しいだろう。

今期業績が大幅に下方修正されたとはいえ、これ以上の後退はまず考えにくい。その理由は大きく3つ。
 
 まず、「3DS」は、発売と同時期に人気ソフトがズラリと揃う。任天堂は『nintendogs』など、ヒットタイトルの新作を投入する計画だ。ソフトメーカーからも、『ストリートファイター』(カプコン)や『ウイニングイレブン』(コナミ)などの大型タイトルが続々と発売される予定だ。

「ラインナップを見ると、ゲームファンにとって非常に魅力的」(岡三証券の森田正司アナリスト)。任天堂は3DSの今期販売計画を400万台としているが、シリーズ累計で1億3000万台を売りさばいたヒット製品の後継機種だけに、この計画はそれほどハードルが高い数字ではないだろう。

3DSの本体価格を2万5千円と、これまでのDSシリーズ最高価格「DSiLL」の1万8000円(発売当初は2万円)を上回る価格設定としたことも、利益ベースではプラス要因となる。当初は固定ファンが飛びつくことが想定できるため、投入初期段階で開発関連の費用を回収し、その後徐々に値段を下げて一般ユーザーにまで普及していく−−。そんな戦略も考えられるのではないか。

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