香港の公立病院に勤務する看護師のティン・チャンさんは、新型コロナウイルス感染急拡大で現場が大混乱に陥るのを目の当たりにしている。
チャンさんはこの2年、コロナ感染を基本的に封じ込める厳格な「ゼロコロナ戦略」に医療の現場から関わってきた。この戦略の軸は軽症であろうが無症状であろうが、全てのコロナ感染者を強制的に入院させることだった。香港ではコロナ死者が累計200人強にとどまっており、この方針が功を奏した部分もある。だが、感染力が強いオミクロン変異株の前では機能不全に陥る結果となった。
これまでで最悪の感染拡大局面に
17日発表されたコロナの新規感染者は6116人に上っており、香港はこれまでで最悪の感染拡大局面にある。16日の重症者は17人にとどまったものの、病院は既に対応しきれなくなっており、医療インフラは崩れつつある。
病院内には患者の受け入れ余地がもはやなく、複数の高齢感染者が屋外で担架の上に横たわっている。チャンさんが勤務する病院では今週、夜勤の時間帯に100人を超えるコロナ陽性者が訪れる日もあったが、対応できた看護師はわずか2人だった。
今のところ軽症者が大半だが、コロナ禍の歴史が示すのは病院の逼迫(ひっぱく)が常に医療の悪化をもたらし、避けられたはずの死者が増えるという点だ。「われわれはこのような事態になるとは全く予想していなかった」とチャンさんは話す。