中国EMS「立訊精密」が自動車の受託製造に参入 「アップルカー」製造受注への布石との臆測も

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立訊精密工業は完成車の受託製造への参入を通じて、自動車業界の「一次サプライヤー」となることを目指している(写真は同社ウェブサイトより)

中国の電子機器受託製造サービス(EMS)大手の立訊精密工業(ラックスシェア)は「新エネルギー車」の受託製造に参入する。

同社は2月11日、奇瑞控股集団および傘下の奇瑞汽車、奇瑞新能源汽車技術の3社と戦略提携の枠組み契約を結んだと発表した。奇瑞は安徽省に本拠を置く中堅自動車メーカーだ。立訊精密工業は奇瑞と合弁会社を設立し、新エネルギー車の完成車の受託製造や部品製造を手がける計画だ。

(訳注:新エネルギー自動車は中国独自の定義で、電気自動車[EV]、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)。

立訊精密工業によれば、合弁会社は同社の自動車部品事業のために製品の開発、設計、量産の機能を提供し、同時にそれらの製品の販売先にもなる。中長期的には、立訊精密工業は自動車業界における部品の「一次サプライヤー」になることを目指しているという。

EMSとしての立訊精密工業は、アメリカのアップルからiPhoneの製造を請け負っている1社として有名だ。同社はすでにカーエレクトロニクス分野にも進出している。2021年1~6月期の決算報告書によれば、自動車関連製品および精密コンポーネント事業の半期売上高は17億7000万元(約322億円)。総売上高に占める比率は3.68%だった。

提携先の奇瑞に親会社が資本参加

市場関係者の間では、立訊精密工業の今回の動きはアップルが開発を進めているとされる「アップルカー」の製造受注を見据えたものとの憶測が飛び交っている。しかし、アップルカーに関してはさまざまな噂があるものの、現時点で確実と言える情報はない。なお、新エネルギー車の受託製造に関しては、EMS世界最大手の台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)が2020年に本格参入を宣言。すでに試作車をお披露目している。

立訊精密工業と奇瑞の合弁会社は、前者が30%、後者が70%を出資して3カ月以内に設立される。注目すべきなのは、両者の戦略提携契約に排他条項が入っていることだ。立訊精密工業の説明によれば、奇瑞系の3社は今後、他の受託製造企業と提携することはできない。

本記事は「財新」の提供記事です

この排他条項の背景には、立訊精密工業の親会社である立訊による奇瑞への資本参加がある。立訊精密工業が戦略提携の発表と同時に開示した情報によれば、立訊は総額100億5400万元(約1831億円)を投じて奇瑞控股集団の発行済株式の19.88%、奇瑞汽車の7.87%、奇瑞新能源汽車の6.24%を取得する予定だ。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は2月12日

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