中国企業がアフリカ「リチウム鉱山」買収の背景 政情不安のジンバブエにリスクを取って投資

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中鉱資源集団は買収したビキタ鉱山の運営会社と15年を超える協力関係にある(写真は鉱山運営会社のウェブサイトより)

レアメタル(希少金属)の採掘・精錬を手がける中国の中鉱資源集団は2月8日、アフリカのジンバブエにあるビキタ・リチウム鉱山の経営権を1億8000万ドル(約207億8000万円)で買収すると発表した。

同社は国有非鉄金属大手、中国有色鉱業集団の傘下企業だ。買収の目的について中鉱資源は、リチウムの自社リソースを拡大し、炭酸リチウムの原料の自給率を高めるためとしている。

中鉱資源は2018年8月にM&A(合併・買収)を通じて炭酸リチウムの製造に参入し、年間6000トンの生産能力を確保。さらに、年間2万5000トンの生産能力を持つ設備が2021年8月に稼働を開始しており、生産量を徐々に増やしていく計画だ。

今回の発表を受け、翌2月9日の中鉱資源の株価は急騰。同日の終値は64.24元(約1165円)のストップ高(前日比10%高)となった。

海外の鉱山を中鉱資源が買収するのは、これが初めてではない。同社はカナダのリチウム・セシウム鉱山や、ザンビアの銅山および鉄鉱山などの権益をすでに保有している。

2019年には依存度を下げる判断

ビキタ鉱山の買収は、鉱山運営会社の株式の74%を保有するアフリカ企業2社から、中鉱資源の香港の全額出資子会社が株式を買い取る形で実施される。鉱山運営会社は現在、出資構成の見直しと株式の買い戻しを進めており、その完了後は中鉱資源の出資比率が100%になる予定だ。

調査会社の推計によれば、ビキタ鉱山のリチウム鉱石の確認資源量は2941万トン、炭酸リチウム換算で84万9600トンに上る。中鉱資源は、現時点で年間70万トンの選鉱能力を1.5倍の年間105万トンに引き上げることを検討している。

本記事は「財新」の提供記事です

注目すべきなのは、今回の買収のタイミングだ。中鉱資源とビキタ鉱山は、実は15年を超える協力関係にある。同社はビキタ鉱山で産出される鉱石の販売代理商であり、中国地区における独占販売権を持つ。

だが3年前の2019年初め、中鉱資源はジンバブエの政情不安のリスクを懸念し、ビキタ鉱山への依存度を下げる狙いでカナダのリチウム・セシウム鉱山を買収した経緯がある。当時の判断を修正する形でリスクを取った今回の買収は、はたして吉と出るのか。今後の展開が注目される。

(財新記者:廬羽桐)
※原文の配信は2月10日

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