「5歳未満のワクチン」に米専門家から疑問の声 データ後回しの「前のめり審査」に大批判
追加で3回目の接種を行えば小児の免疫反応は高まるとみられるが、必ずそうなるという保証はないと、ポーランド氏を含む複数の専門家は指摘する。アメリカではオミクロン株による感染は減少傾向にあるため、審査日程を数週間先延ばしし、3回目接種の治験結果を待つ余裕はあるはず、というのがこうした専門家たちの意見だった。
3回目接種の治験データを待つことなくワクチンを承認すれば、規制手続きに対する国民の信頼が揺らぎ、わが子のワクチン接種に不安を感じている親の抵抗をさらに強めるおそれがあると専門家は警告していた。仮に何百万人という親が子どもに2回の接種を受けさせた後に、3回目の接種に効果がないという結果が出たらどうなるか――。
当局は子どもの後遺症を懸念
一般に子どもは新型コロナに感染しても重症化しにくいとされているが、オミクロン株の流行が始まってからは子どもの入院がかつてないレベルに増えている。ただ、新型コロナに感染して入院した子どもは、糖尿病や慢性肺疾患、心臓障害など、重症化につながる基礎疾患を抱えている場合が多いことが、各種研究から明らかになっている。
専門家の間には、FDAはアメリカにいる1800万人の6カ月~4歳全員を対象にワクチンを承認するのではなく、追加のデータが得られるまでは、重症化リスクの高い子どもに限って接種を推奨するようにしてはどうか、とする声もあった。
それでも、オミクロン株による感染急増を受けて、子どもへのワクチン接種を強く望む親もいる。
政権内の議論をよく知る2人の政府関係者によると、子どもを対象にしたワクチン接種の推進は、全成人に対する3回目接種の推奨と同じく、バイデン政権の「今後に備えた計画」の一部だという。政権内では、オミクロン株の流行は峠を越した可能性があるが、新たな変異株が出現する前に子どもたちを(ワクチンで)守る必要がある、といった議論が交わされている。
FDAのステファニー・カッコモ報道官は、「子どもの間で新型コロナの後遺症が明らかに増えていることも懸念している。感染後に自己免疫疾患や1型糖尿病を発症する場合もある」と述べている。