「5歳未満のワクチン」に米専門家から疑問の声 データ後回しの「前のめり審査」に大批判
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、ファイザーとビオンテックが共同開発した5歳未満向けの新型コロナウイルスワクチンの承認審査を、近年に例のない流れで進めようとしていた。
FDAの科学諮問委員会は生後6カ月〜4歳を対象としたワクチンの2回接種を認めるか2月15日に決定する予定だったが、FDAは11日、当初方針を見直して審査日程を先延ばしすると発表した。「フルコース」(3回接種)の有効性に関する治験結果を待つことなく承認手続きに入ろうとしたことに対し、多くの専門家から批判の声が上がっていたためだ。
実際、これまでの治験では、2回の接種を受けた2~4歳児には強い免疫反応が得られなかったという暫定的なデータが示されている。追加で3回目の接種を行った場合の有効性については、あと数週間ほどで結果が出る見通しだ。
FDAが承認を急いだ理由
ファイザーとビオンテックがFDAに強く勧められて緊急使用承認の申請を行った点も、極めて異例だった。新型コロナの感染状況は急速に変化しており、連邦政府の保健当局者は限られたデータで重大な決断を下さなければならなくなっている。より危険な変異株が登場する前に小児への接種を始めることが重要、というのがFDAの立場だった。
ところが、乏しいデータを基にワクチンの承認を進めようとするFDAに対し、専門家からは懸念する声が上がっていた。
「これまでにないやり方に戸惑っている」。メイヨー・クリニックのワクチン研究グループの創設者兼責任者で、学術誌『Vaccine(ワクチン)』の編集長でもあるグレゴリー・ポーランド氏は、「データが十分でないことに納得がいかない」と話していた。