株価の下落局面で投資家は何をすればよいのか 長期と短期では「何が重要なのか」は全然違う

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これとは逆に、短期売買の場合、市況の予測が最も重要だと誤解する人が多い。ここで言う短期売買とは、数週間単位の市況の上下動を利用しようというスイングトレードを含む。

その誤解とは、短期市況変動の見通しを当て続ければ、そのたびに売買を繰り返して儲け続けることができる、といったものだ。そういった誤解にとらわれた人は、さらに儲けを極大まで膨らませようとして、レバレッジを大いにかけた取引を行ったりする。個別銘柄の信用取引や高レバレッジの指数関連投信への投資などだ。

なぜそうした考えが誤解かといえば、ぴたりぴたりと市況の山谷を当てることは、不可能だからである。短期的な市況変動は想定外の要因などでいくらでも上下に振れ、予測不能だ。

では、短期売買で何が肝要かといえば、ポジション管理である。見込みと逆に相場が動いた際に、どこでポジションを投げて損失をいくらの金額までに抑えるかを、売買を始める時点ですでに計画しておくことが、はるかに重要だろう。どう大儲けするかではなく、どう大損しないかが生き残りのカギだ。

専門家の見通し数値だけを見ても、意味がない

「短期的な見通しが当たるはずがない」ということは、かく言う筆者の見通しも当たらないということだ。「では、別の見通しが当たり続ける専門家を探そう」と思うのは、その人の勝手だ。しかし、おそらく何十年探し続けてもそんな専門家は見つからないし、投資家自身で見通しを当て続けられるような安易で万能な手法もないだろう。

このような現実にもかかわらず、多くの人は、専門家の市場予測の数字しか見ていないようだ。過去の見通しが当たった専門家は、次も当たるとの期待が強いのだろう。

もちろん、見通しの数字は提示している情報の中の重要な部分であるから、筆者も「予測が外れた」との批判を浴びるのは当然だ。しかし、結論の数値だけしか見ずに、勘で作った見通し数値がまぐれ当たりした専門家を、どう判別するのだろうか。

やはり、結論の数値よりも、結論に至る推論や分析がもっと重要だと考える。

筆者は当初「2021年中は世界の株価は堅調だろうが、2022年前半に大きく下落する可能性がある」と述べ、「日経平均は2万5000円辺りに下がりうる」と主張してきた。偶然、1月に2万6000円に迫る動きとなったため、当コラムの読者数も足元ではぐっと増えているようだ。

そのこと自体はとてもありがたい。だが「馬渕さんは最近、予想数値が当たっているから、これからも当たるだろう」という期待だけなら、あらぬ期待を抱いた読者の皆様はいずれ去っていくだろう。

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