【産業天気図・工作機械】単月受注に「800億円」の天井感。円高も回復の勢い削ぎ、終始「曇り」止まり
10年10月~11年3月 | 11年4月~9月 |
工作機械業界は、中国を中心とするアジア圏を頼りに2009年度の大不況から回復基調にある。ただ足元の円高で宿敵ドイツ勢や韓国・台湾勢との競争が激化。回復の勢いが年末に向けて次第に鈍り、続く11年度は市場の調整も加わって足踏みするリスクが一部で指摘され始めた。直線的な右肩上がりの回復シナリオは、後退しつつある。景況感は10年10月から1年通じて「曇り」にとどまりそうだ。
「どうも800億円に単月受注の天井感がある」。日本工作機械工業会(日工会)の中村健一会長は眉をひそめながら、こうつぶやく。足元の受注は、そう悪い訳ではない。8月受注は859億円(同会調べ)で、前年同月比2.7倍、前月比でも2.1%増と堅調増。内外需の内訳を見ると、外需が572億円で前月比4.3%増、前年同月比では約3倍。引き続き中国を軸にアジアの設備投資需要が旺盛で、ことアジアに限れば、リーマンショック前の水準を今春時点であっさり超え、さらに増勢が続いている。北米でも投資意欲が少しずつ戻ってきたもようだ。
日工会の10年受注予想額8500億円(1~8月累計額6109億円)は、現在の月800億円ペースをキープできれば十分到達可能。成り行き次第では9000億円超への再修正が視野に入る。最新の「会社四季報」秋号では電子部品用旋盤が中国で活況なツガミや、欧米で航空機関連が期待される牧野フライス製作所をはじめ、主立ったメーカーについて会社計画から増額した独自予想を示している。
しかし中村会長が懸念を示したように、楽観ばかりもしていられない。好調なアジアといえど、ユーロ安やウォン安の恩恵を受ける欧州勢、韓国勢との間で価格競争が一段と厳しくなっている。実際、アジアからの受注の伸びは09年後半から10年初め当時に比べて鈍化。欧米向けも「ドル建て取引では受注が減らない代わりに値上げしにくく採算が悪化するし、技術力が高いからと円建て取引にこだわると受注自体がストップしてしまう」と、日工会幹部は営業最前線の苦衷を漏らす。