日本女子バスケが大事にした「声出し」の大きな力 複数の人間が関わるチームにおいて重要なこと

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東京五輪で決勝まで進み、絶対王者アメリカと戦えるほどのチームをつくった男が語ります(写真:ロイター/アフロ)
東京オリンピックで史上初の銀メダルに輝いた日本女子バスケ。当時、監督だったトム・ホーバス氏は、どのようにチームを育てていったのでしょうか。著書『チャレンジング・トム - 日本女子バスケを東京五輪銀メダルに導いた魔法の言葉』から一部抜粋、再構成してお届けします。
前回:日本女子バスケが100以上もの陣形を用意した訳(2月22日配信)
前々回:「東京五輪銀」日本女子バスケが重ねに重ねた準備(2月15日配信)

コミュニケーションがチームを作る

コミュニケーションとはなんでしょうか? 一般的には、人と人とが言葉や文字などで意思の疎通を図ったり、情報などを共有することだと言われています。そのとおりです。特に私たちのように複数の人間が関わり合うチームにおいては、そのコミュニケーションがとても重要になります。

ただ、上記のとおり、言葉や文字「だけ」ではなく、「など」と表したのには意味があります。コミュニケーションを取る上では「見る」こともとても大切なのです。 

女子日本代表でもそうでしたが、一定期間、一緒に練習していると、選手たちの「もっとうまくなりたい」という強い気持ちや、逆に「日本代表に入れたから、これでいい」と現状に満足している気持ちが見えてきます。練習中の注意に対するリアクションや表情、その後のプレーのエネルギーを見るとすぐにわかるのです。

エネルギーが低いと思ったら、その選手に注意します。ただし注意して終わるのではなく、そのリアクションも見ます。熱くなって上を向くのか、ヘッドダウンして下を向くかを見るわけです。後者であれば、同じチームメイトとして受け入れることは難しいと言わざるをえません。

この「受け入れる」「受け入れない」といったところは、もしかすると一般社会、特に会社や部活動のような組織だと許容されないところかもしれません。今はエネルギーが高くなくても、その後の成長を促すという側面もありますから。

ただ私たちは勝つか負けるかの世界にあって、常に「勝利」という結果を求められるチームです。特に日本代表ともなれば、文字どおり日本を代表するチームですから、そこに発展途上の選手を、じっくり時間をかけて育てるという観点はありません。日本代表はデベロップメントチーム、つまり選手を育てるためのチームではなく、結果を求められるチームなのです。その差は大きいでしょう。

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