日本女子バスケが大事にした「声出し」の大きな力 複数の人間が関わるチームにおいて重要なこと
一方で選手個々を見ると女子日本代表は静かな選手が多かったです。赤穂ひまわりはあまり声を出さないし、町田瑠唯もあまり声を出しません。本橋菜子も、林咲希もそうです。選手としてはさまざまな才能に秀でた選手たちですが、コート上のコミュニケーションという意味では決してよくないことです。
東京2020オリンピックは無観客での開催になったので、残念ながらアリーナでの応援の声はありませんでした。しかし通常はアリーナ内に声援が飛び交うので、コート上のコミュニケーション、特に大きな声でのコミュニケーションが欠かせません。
状況を伝えれば不利を事前に回避することもできる
たとえばディフェンスの動きをせき止めるために、ひそかに「スクリーン」と呼ばれる壁を作りに行くプレーがあります。それに対してディフェンス側も周りの選手が「右からスクリーンに行ったよ」といった声を出して、状況を伝えてあげれば、不利になる状況を事前に回避することもできます。
そうした声が大事なことだとわかっていながら、あまりにも練習中に声を出さない選手たちが多かったので、声を出させるために「このディフェンスではひまわりだけ声を出して。ほかのみんなは静かにして」と指示したことがあります。みんながディフェンスをしているときに、ひまわりだけが「ボールマン(はここにいるよ)!」とか、「ヘルプ(ポジションにいるよ)、ヘルプ」といった声を出すのです。
ひまわりは恥ずかしいかもしれませんが、彼女が声を出さなければ、練習が長引くだけです。だから彼女も徐々に大きな声を出すようになりました。「次はルイ。ルイだけ声を出して」。
試合中に声を出してコミュニケーションを取らなければ、プレーの判断を間違えるきっかけになりかねません。NBAのチームでもそうした練習をしたことがあると聞いていたので、それを取り入れてみました。
練習の前後や試合中でも選手たちがハドル(輪)を作って、キャプテンが「ワン、ツー」と言うと、みんなが「チーム!」、もしくは「ディフェンス!」と呼応する。
そうしたことはバスケットボールをはじめとしたスポーツ独特の慣習かもしれません。しかしチームがひとつになるために、声に出して意思の疎通を図ることは必要です。
気持ちにせよ、状況にせよ、言葉を使って伝える。そうすれば自分たちで決めた目標に向けて、みんなが同じ方向を見て、同じ考え方を共有して、判断ミスを生じさせることなく前進することができるのです。
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