大村崑を「筋トレ沼に落とした」20代青年の正体 「ぼくの師匠は、60歳年下のスーパーマン」
瑤子さんに連れられて向かったライザップ。
入会しないつもりだったけれど、そこにいた受付の女性の雰囲気がよかった! そしてなんとぼくよりも口が達者でした。にこやかで、感じがよくて、で、気がついたら、不覚にもぼくはジムに通いたくなってしまったのです。
「筋肉は死ぬまで鍛えられます」と、その女性は殺し文句をまず口にしました。
「筋肉の知識を豊富に持ったトレーナーが、本格的な筋トレを基礎から教えます。崑さんも、じきに引きしまった、カッコいい体つきになれるし、体力がついて疲れにくくなりますよ」
女性はテンポよく話してくる。ほう。ええやん。そして、最後の殺し文句が、「速く歩けるようになりますよ」でした。このひとことで、徳俵でかろうじて踏ん張っていたぼくも、ついに土俵を割ったのです。
いったん土俵を割ったら、ワクワクしてきました。筋トレでぼくの人生が変わるような気がして、胸が高まります。86歳にもなって、新しいことに挑戦できる。なんとも楽しそうやおまへんか。
というわけで86歳の春、ぼくは生まれてはじめて、若者もすなる筋トレなるもののためにジム通いを決心したのでした。
どんどん若返っていくぼくの体
火曜日と金曜日の週2回、1回1時間程度の筋トレが始まりました。しかし、開始記念日たる初日はショックの連続です。
まず、スクワット。下半身を鍛えるには最高の運動で、「筋トレの王様」と呼ばれているそうです。が、これができない。
腰を沈めるときに、お尻をうしろへ突き出すように言われるのですが、それをすると、体ごとうしろへひっくり返りそうになるのです。脚の筋肉も尻の筋肉もあまりに弱っていて、体を支えることができないためです。
そこで、バランスボールにもたれておこなうことになりました。けれど、バランスボールの助けを借りても、腰を浅く3、4回沈めただけで両脚がブルブル震えだして、それ以上続けられないのだから情けない話です。
マシーンを使った筋トレもおこないました。大胸筋などを鍛えて逞しい胸をつくるベンチプレス、正しい姿勢づくりに欠かせない背中の筋肉を鍛えるラットプルダウンなどに挑戦したのです。しかし、どれも3、4回が限界。
1時間程度のエクササイズが終わる頃には、ぼくは声が出ないほど疲れはてていました。全身汗だくで、ハアハアと肩で荒い息をするのがやっと。その場からしばらくは動けないほど疲労困憊です。
ところが、ふしぎなことに気分は爽快でした。何十年も経験したことのないほど爽快だったのです。
この日以降、ぼくの体のなかで時間が逆流しはじめました。86歳の春を境に、ぼくの体はどんどん若返っていったのです。
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