日本の住宅設備「デジタル化が進まない」根本原因 「スマートホーム」が本格普及しない理由とは
戦後、日本が高度経済成長を遂げたのは、道路や鉄道などの社会インフラ整備は「公助」、農業、エネルギー、製造業などは民間事業者による「自助」が分担する経済モデルがうまく機能したからだ。
しかし、デジタル社会において「民間企業が協力してコストや利益をシェアして事業を展開する『(日本版エコシステムとしての)共助』のビジネスモデルを確立して広げていく必要がある」と村上氏は強調する。それが実現できなければ、GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック=現・メタ、アマゾン、マイクロソフト)のような巨大IT企業に市場を支配される懸念があるからだ。
デジ庁では、スマートシティ実現のための「データ連携基盤」を開発して提供する準備を進めている。この基盤をスマートホームのサービス連携にも活用し、デジタル田園都市国家構想のなかで地方・中小の生活・産業の変革につなげていく。
その仕掛けを所管しているのが、経済産業省情報経済課のスマートライフのチームであり、その担当の一人がアーキテクチャ戦略企画室の和泉憲明室長。もともとは博士号(工学)をもつ産業技術総合研究所(産総研)の研究員で、2017年にIT戦略立案のために経産省に移籍した人物だ。
「スマートホームの実現により、生活者の需要に関する情報、消費財や住宅メンテナンスなどのライフサイクル情報を構造化して分析可能とすることで、製品・サービスの新たな連携・エコシステムが構築できるのではないか、という期待がある」
インターネットの世界で「情報の構造化」を実現して巨大企業へと成長したグーグル、それらの情報を分析しレコメンデーション(推薦)機能によって流通市場を制覇したアマゾン。この2社が行った取り組みをスマートホームの世界で実現しようというわけだ。
スマートホームのアーキテクチャ(構造体系)を構築するうえで、「データ連携基盤」は国が用意したとして、「共助」のビジネスモデルはどう構築していくのか。
三菱地所が立ち上げたスマートホーム
「日本でスマートホームが普及しないのは、ユーザーが使いにくいうえに、住宅供給会社としても安心して採用・提供できるサービスがないから」。三菱地所は昨年11月にスマートホームサービス「HOMETACT」を独自開発し、賃貸マンション「ザ・パークハビオ麻布十番」(住戸数106戸)に導入した。
従来のスマートホームサービスは、メーカー横断での機器連携が進まず、ユーザーは複数アプリをバラバラに利用するしかなかった。加えて設置・設定もユーザー任せになるケースが多く、コールセンターや緊急対応などのサービスが充実していない。その結果、住宅供給会社としてはなかなか採用しにくかった。
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