日本の住宅設備「デジタル化が進まない」根本原因 「スマートホーム」が本格普及しない理由とは

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2017年にアマゾンやグーグルの日本語対応「スマートスピーカー」が登場すると、家電機器などがインターネットにつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)技術やAI(人工知能)を搭載した「IoT住宅」「インテリジェントホーム」などが発売された。その後はロボット掃除機や調理器などの「スマート家電」も増えている。

どれも住宅内に設置した家電・住設機器が宅内通信回線やインターネットに「つながる」ことが「スマートホーム」の基本要件であるのは間違いない。

普及が進まないスマート家電

日本ではパソコンの世帯保有率は2020年に70%、スマートフォンは86%を超え、インターネット利用率(個人)も83%に達している(総務省「情報通信白書」2021)。しかし、スマート家電の世帯保有率は7.5%で、過去10年間、ほぼ1桁台にとどまっている。

現時点で「スマートホーム」に対する消費者のイメージは「あれば便利かもしれないけど、別になくても困らない」というものだろう。

2020年6月に発足したスマートホーム普及団体のLIVING TECH協会代表理事の古屋美佐子氏(アマゾンジャパン・オフライン営業本部営業本部長)によると、スマートスピーカー「アマゾンエコー」も「日本ではストリーミング音楽再生の用途で売れている」のが実情のようだ。他には既存の家電製品の赤外線リモコンをまとめて操作できる「スマートリモコン」も売れているが、これも従来の生活スタイルを大きく変えるような利用方法ではない。

しかし、同協会が実証実験のために建てたスマートホームで、さまざまなスマート家電を連携して利用できるサービスを体験したモニター家族からの評価は高いという。

「住宅の電気使用量をHEMSで“見える化”しても、利用者はすぐに飽きて見なくなるのではないかと懸念していたが、意外とよく見られていることがわかった」。約10年前にスマートホームを発売した大和ハウス工業で長年、同分野の研究を続けてきた総合技術研究所主任研究員の吉田博之氏も利用者の潜在的ニーズは高いと見る。

課題は、スマホやパソコンのように、簡単にネット環境につながってサービスを利用できること。家電・住設機器とサービスの両方が、消費者が利用しやすい手頃な価格で提供されることだろう。

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