日本の住宅設備「デジタル化が進まない」根本原因 「スマートホーム」が本格普及しない理由とは
日本では標準通信規格「エコーネットライト」が開発され、同規格搭載機器の累計出荷台数は2020年に1億台を突破した。しかし、家電メーカー各社は当初、競合製品がつながらない「囲い込み戦略」を展開し、相互接続がなかなか進まなかった経緯がある。
一方、アメリカではIoT機器をクラウドサーバーからインターネット経由で操作できる環境が整うと、WebAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)という技術を使って、異なるメーカーのクラウドサービスを連携するIT系ベンチャー企業が現れた。
2010年に開発された連携プラットフォーム「IFTTT(イフト)」と呼ばれるサービスを利用すると、アマゾンやグーグルのスマートスピーカーから、アイロボットの掃除機やフィリップスの照明など、異なるメーカーの機器を操作できる。「つながる」ことで「スマートホーム」の普及が始まったわけだ。
日本でも、WebAPIを利用した「スマートホーム」は2017年頃から登場する。パナソニックでも、HEMSトップシェア(同社調べ)のホームコントローラー「AiSEG(アイセグ)2」でWebAPIによる他社連携サービスをスタートし、オープン戦略へと転換。2018年には標準通信規格「エコーネットライト」搭載機器を対象としたWebAPIのガイドラインも策定・リリースされた。
WebAPIによる他社連携はなぜ進まないのか
「パナソニックは2年前の発表で、AiSEGでホームIoTのデファクト(事実上の標準)をめざすと表明したが、残念ながらWebAPI連携できる他社の機器はほとんど増えていない」
パナソニックのAiSEGを採用している住宅供給会社からは落胆の声が聞かれる。
エコーネットのWebAPIも、2021年9月に関西電力のスマホアプリから三菱電機のエコキュートを遠隔操作するのに使われたのが初めてだ。長年、エコーネットの普及に取り組んでいる神奈川工科大学の一色正男教授も「各社には採用をお願いしているのだが……。実際に採用した事例が出てきたので、これから普及するのではないか」と期待するが、先行きは不透明だ。
「最初は国内ITベンダーのWebAPI連携サービスを検討したが、先方が事業撤退することになった。IFTTTも当初は無料サービスだったが、2020年9月に突然、有料プランが発表され、無料で使える機能は大幅に制限された。外部のWebAPIを利用してサービスを提供するのはリスクもある」。大和ハウス工業の吉田氏もそんな見方を示す。
なぜ、WebAPIによる他社連携は進まないのか――。
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