日本の住宅設備「デジタル化が進まない」根本原因 「スマートホーム」が本格普及しない理由とは
その背景をパナソニックに聞くと「APIは有料で広く公開している。それを使って接続するかどうかは相手側の政策的な判断だ」との答えが返ってきた。住宅会社の中には、ホームコントローラーで得た電気使用量や温度などのデータを使って住宅性能をアピールして営業活動に役立てている企業もあるというが、そのデータを提供するのも有料だ。
日本の大手家電メーカー各社は、従来の家電・住設機器のハード単品売りから、ハードから得られるデータを収益化する高付加価値なビジネスモデルへの転換を目指している。確かにスマート家電や住設機器とAPI連携して儲かるサービスを提供できる見込みがあれば、有料でもつなげようという企業は出てくるだろう。
昨年8月に積水ハウスが、パナソニックのAiSEG2を装備したスマートホームサービス「プラットフォームハウスタッチ」の提供を開始した。スマホで、玄関施錠、エアコン、照明、湯はり、床暖房、窓シャッターの操作ができるほか、温湿度センサーによる熱中症アラートや火災警報器鳴動の通知機能がある。これらを利用するのに機器の初期投資に加えて、月額2200円の使用料がかかる。まだ発売して半年で販売実績は公表されていないが、「好調」という話は聞こえてこない。
アメリカでもスマートホームサービスで成功しているのはベンチャー企業がほとんどだ。はたして日本の大手家電メーカーが彼らの重たい間接コストを抱えながら収益化をめざしても、広く一般家庭に普及するようなスマートホームサービスを生み出すことができるのだろうか。
「技術的にはすでに実現可能な状況」だが…
「スマートシティやスマートホームで提供が検討されているサービスのほとんどは、技術的にはすでに実現可能な状況にある。問題は消費者が利用したいと思える料金で提供するための『共助』のビジネスモデルを実現できていないことだ」。デジタル庁で国民向けサービスグループの責任者で、デジタル田園都市国家構想も担当する村上敬亮統括官は、そう指摘する。
村上氏は2年前に日本版スマートシティ「スーパーシティ構想」の立ち上げにも関わり、スマートシティ実現のための「データ連携基盤」の整備に取り組んできた。「スマートホーム」はスマートシティを構成する重要アイテムであり、スマートシティで提供される行政、教育、医療、交通・物流などのサービスの多くは住宅を中心に利用されるものだ。
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