「売れない」と言われたポケトークが快進撃の理由 齋藤太郎×尾原和啓のクリエイティブ対談3

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齋藤:候補としては明石家さんまさんのほかにも、大谷翔平さんもいたんですよ。ロサンゼルスに移ったばかりの彼が、ポケトークを持って向こうで生活する場面を描くとか、マウンド上で球の代わりにポケトークを持つとか、いろんなビジュアルを考えていたんです。ほかにもいろいろ提案したけれど、いちばんコストが高くつくのがこの2案だった。最終的にはソースネクストさんが、勇気をもってさんまさんを選んでくれたのがよかったと思います。

(画像:筆者提供)

尾原:そうですよね。普通、ああいう通訳機の広告をつくると、スペックを強調するような、ある程度テクノロジーがわかっている人に向けたものになる。でもテクノロジーがわかっている人にとっては、スマホの翻訳機能で事足りるわけです。

尾原和啓(おばら かずひろ)/IT批評家。1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、グーグル、楽天の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任(撮影:干川修)

実はポケトークって、翻訳を提供しているんじゃないんですよね。「海外に行って現地の人に話しかけられても、怖がらずに済む」っていう“心強さ“や、「現地の人にふらっと話しかけることができる」という“勇気“を売っているんですよね。だから言葉がわからないから海外に行くのが不安だという人たちに届かないと意味がない。そこで最終的に、日本一のおしゃべり魔人である明石家さんまさんが、ポケトークを使って海外の人とコミュニケーションするというCMになった。

ポケトークの革命的なところは、海外でも携帯電話の契約をしなくても使えるというところですよね。普通だったら月額で売るところを、最初にお金を払えば2年間使い続けられるようにした。

僕自身は海外で携帯電話のSIMを買って、その国で使えるように設定するのは簡単にできるけれど、英語ができない人や機械に弱い人は、海外のSIMも買えないし、設定もできない。プロダクトもコミュニケーションもそういう人に向けて首尾一貫していたから、おっしゃるように「名無しの権兵衛」にも大ヒットが飛ばせたのでしょう。まさにビジネスとしてのクリエイティブ解決ですね。

齋藤:あのビジネスモデルをちゃんとつくったのが、松田憲幸会長をはじめ、ソースネクストのみなさんの素晴らしいところですよ。そういう部分まで二人三脚でできているのがありがたいと思っています。

クライアントのリトマス試験紙になる

齋藤:ソースネクストの松田さんは、僕をリトマス試験紙というか、壁打ち相手に使っているところもあるんです。

尾原:リトマス試験紙?

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