ハイブリッド車はいつから「悪役」になったのか 正義の味方「EV」をめぐる2つの大きな誤解

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しかし、2015年、アメリカの環境保護局(EPA)が、世界的自動車メーカーであるドイツのフォルクスワーゲン(VW)が排ガス検査時に不正を行っていたと発表します。自動車業界は大混乱となり、VWのCEOは発表から数日で辞任に追い込まれます。ディーゼルエンジンに対する消費者からの信頼は失墜してしまいます。

VWやヨーロッパの自動車メーカーは、ディーゼルエンジンを諦めます。そこで目をつけたのが成長著しいEVです。EVへの急激なシフトを進める決断をし、自動車メーカーを支援したヨーロッパの各国政府も、税控除などを活用してEVの支援に力をいれます。

VWは、EVを推進すると共に電力子会社のElliを設立します。ここでは、自動車とエネルギーを融合したサービスを企画しています。具体的には、EVの購入者に対して、再生可能エネルギーの販売、家庭へのEVの充電設備、街中での充電スポットサービス、余った電気の電力網への電力販売のサポートなどを計画しています。

これらのヨーロッパの動きから見えてくるものは、何でしょうか?

ハイブリッドがいつの間にか悪役になったのは、ライバルが仕掛けてきた「ゲームチェンジ」によるものだということです。ハイブリッド車の性能が悪くなってしまったというわけではありません。ここにも各国の思惑が渦巻いているのです。

正義の味方、EVに関する2つの誤解

「恋は盲目(Love is blind)」。シェイクスピアの作品のセリフです。世界中で高まるEVへの期待。多くの投資家がEVに恋し、EV企業の株価は上がる一方です。脱炭素の切り札として登場した正義の味方、EV。私もEVの将来性、可能性に大きな期待を抱いていますが、あえて2つの誤解についてご紹介します。

誤解1 すべてのガソリン車がEVになる

EVはどのように普及していくのでしょうか? 私は、EVは「定・短・軽」から普及していくと考えています。「定期ルート、短距離、軽い車」です。

理由は、充電インフラです。ルートが決まっている車であれば、充電インフラの整備は比較的容易です。短距離の移動や軽い車であれば、そもそも充電の心配が減ります。EVは、走行距離が事前にある程度予測でき、短い距離を軽い荷物を載せて運ぶ移動に最適です。

そういった理由から、EVは街中のバスや宅配用の車、ゴミ収集車などに向いています。長い距離を走らない都市部の乗用車も向いています。中国では、バスやタクシーからEV化が進んでいますが、このような理由が背景にあります。逆にルートがまちまちで、長距離を走る可能性もあり、重い荷物を積む車はEVには不向きです。別の輸送手段、移動手段が生まれてくるでしょう。

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